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どうなる米朝どうする日本 ~朝鮮半島のいま~(後編)

 どうなる米朝どうする日本~朝鮮半島のいま~ 集会の続き
 後半は「今求められる日朝、日韓関係のあるべき姿」と題して、岩波「世界」の元編集長、岡本厚さんのお話である。
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 安倍政権は「文政権相手せず」と”近衛声明”のもじりみたいである。平和条項を持っている国のやるべきことか?朝鮮(岡本氏はDPRKと呼ぶ)への対応と同じで、「対話と圧力」と言いながら、圧力しかかけていない…で結局何も得られなかった。安倍外交は韓国のナショナリズムに火をつけ、この問題は非常に長期化するだろう。
 安倍政治とは”他者”がない政治だ。相手を説得して議論を進めるというやり方はしない。身内の利益はよく守るが、公共と言う概念が非常に薄い…だから文書を改竄したりするのだ。
 日韓関係のキーワードは、2つの「歴史」…20世紀前半の、侵略と植民地支配・20世紀後半の冷戦(熱戦)と対立・分断の歴史である。「慰安婦」「徴用工」問題は、第一の「歴史」問題が、第二の「歴史」で解決されずに残ってるということ…日韓基本条約は、冷戦体制の構築のための条約である。 
 米朝関係のキーワードは「恐怖」と「時間」である。朝鮮戦争とDPRKの「恐怖」…核開発は認めないが、朝鮮戦争で空爆を受けたことが、朝鮮に核開発をさせた。逆にアメリカは核で狙われる「恐怖」を味わっている。「時間」は、①90年代の米朝枠組み合意と、②2000年代の6者協議において、米国はDPRK崩壊までの時間稼ぎ、DPRKは核・ミサイル開発の時間稼ぎをした。
 戦争というのはやってはいけないし、核を一回持った国(南アフリカやイスラエル等)がそれを手放すことがいかに難しいか…トランプ大統領はどうゆう戦略があるのか分からないが、彼のような人でないと朝鮮との対話はなかっただろう。このチャンスを生かさなければならない。
 安倍政権の朝鮮半島政策は、DPRKへの敵視政策や、安倍政権の談話を見ると明らかになる…外交青書にみる安倍政権の対韓認識は、朴槿恵政権時は「自由、民主主義、基本的人権などの基本的な価値と利益を共有する重要な隣国」「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」という文言が、文在寅政権になってから無くなっている。2019年版には「韓国側による否定的な動きが相次ぎ…日本側の一貫した立場に基づき、韓国側に対し適切な対応を引き続き求めていく考えである(要旨)」と、ほとんど何も書いていない。韓国への敵視は、昨日今日に始まったことではない。朴槿恵政権時も、朴槿恵は1度も日本に来ていない。「慰安婦合意」もアメリカが中に入っているだろう…おかしい事には声をあげないと、沈黙のスパイラルが起こってしまう。
 20世紀後半の体制であった「冷戦」が終結し、「日米安保体制」の転換が迫られている。朝鮮半島の統一、平和を望むのか、それとも対立・分断を支持するのか…日本は「統一に反対の意見」を持っているだろうと疑われている。
 岡本氏は、以上のようなことを述べられた。
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 休憩をはさんで、服部良一氏のコーディネートによるシンポジウムである。なお李富栄(イ・ブヨン)さんの通訳は金光男(キム・クァンナム)さんである。
 まず服部氏から、獄中で知った拷問死の事実をどうやって獄外に伝えることができたのか?ということについて、ブヨンさんは教導官との人間関係を使ったとのこと。またブヨンさんは名古屋で「表現の不自由展・その後」が中止になったことについて、大変驚き、問題である…脅迫電話をすれば中止できることになる。日本社会の変質の表れだと述べた。また岡本氏も”ならず者”を暴力装置として使う…これをほうっておくと、さらに暴力化していく。攻撃する者に対し、どう対応していくかが問われると述べられた。
 米朝関係について、ブヨンさんはトランプ大統領は選挙態勢に入っている。米朝会談の「成果」としてICBM級のミサイル発射と核実験を注視させているが、これを「成果」とすることは難しい。安倍政権は改憲のため、朝鮮で引き続き危機が存在し、核を放棄しないことを望んでいる。時間が経てばアメリカの外交・軍事が安倍に引っ張られるのではないか?トランプの朝鮮政策は与党からも野党からも叩かれている。今の利益に反しない以上の進展はないのではないか、悲観的に見ていますと述べられた。
 岡本氏は、トランプ政権は国務省の予算を減らし、戦略的な体制がとれているのか分からない。一括して非核化する「リビア方式」は朝鮮は乗らない、段階方式でいくだろう。金正恩もある程度のところで譲歩してもいいと考えてはいるだろう。交渉は相当長くなり、経済制裁をかけられている朝鮮にとって時間との競争になるだろう。また、本来、日本はもっといろいろと役割が出来るにもかかわらず、何もできないのはとても残念だと述べられた。
 通訳のキム・クァンナム氏にも意見を求めると、朝鮮は制裁緩和が無理なら、新しい要求として朝鮮の安全保障について出そうとしているのではないか?アメリカの「ビッグディール」が出来ないなら、核凍結論があるが、これではニョンビョンの核施設は稼働している…核保有国であることを認めることになる。朝鮮の新しい提案と、アメリカが段階論を言ってい認める方向に行くと思うが、選挙でトランプは譲歩する余地はないだろう…とのことであった。
 服部コーディネータからさらに、東京から来られた平和フォーラム、総がかり行動の共同代表である福山氏に話をふる…日朝、日韓については特に取り組んでいるわけではない、それぞれの諸団体で頑張るということだが、安倍が朝鮮半島和平の足をひっぱることに反対する。東アジアで非核・平和を確立するという方針を打ち立てたと発言された。
 コーディネーターから、どのような知恵を出し合えば良いかという問いに対し、ブヨンさんは、過去の植民地支配をした側とされた側が、再びその価値観をめぐって衝突していることに胸を痛めている。日本の韓国に対する態度をみると、アジアの隣人とどのような関係をつくろうとしているのか、深刻に考えざるを得ない。日本がアジアに戻るのか、アジアを脱し、引米(このような言葉をつかわれた)するのか、その岐路にたっている。東アジアの平和、非核化を実現することは、「強大な日本」が成立することを阻止することにつながる。日本の大国化を防ぐのは、日本の平和にとっても良いことだ。韓国を「ホワイト国」から外すことに95%が賛成している、このようなでっち上げをしてはなりません…と訴えた。
 岡本氏は、日本の言論・メディアは安倍政権の”無理矢理政治”の後押しをしている。日本の大国化と言われたが、日本は今、衰退している。一人当たりのGDPは25位、韓国は27位ぐらいだ。一種の「あせり」が今のいろんな社会現象にかかわっている。日本はアジアの中で生きる、アメリカだけに乗っかって生きるわけにはいかないと述べられた。
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 シンポジウム終了後、ヨンデネットから挨拶…韓国は敵なのか声明の紹介と賛同署名等の呼びかけがなされた。
 集会参加はおよそ200名、今の日韓関係の悪化は、安倍外交…その思想的バックボーンが、日本会議の大日本帝国万歳思考…そのものであること(だから韓国の集会は「反安倍」を掲げる)が強調された集会であった。ただし、その安倍外交を支持し、喝采を送っているのが日本の普通の民衆であり、底には「韓国・朝鮮蔑視」「歴史修正主義」が流れていること、それに有効なカウンターを打てていないことが問われた集会でもあったと思う…李富栄さんは、あまりそのようには言わなかったけれどね。

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