中曽根と安倍の違い
昨日、死去が報じられた中曽根元総理も、戦後5位の長期政権を誇った。また昨日書いた通り、レーガン・サッチャーと同時代に進められた、資本主義の危機の救済策→新自由主義(もちろん当時そんな言葉はない)政策導入を推し進めた政権であった。
中曽根は自民党・保守の「傍流」から出てきた。それまでの「保守本流」は、「改憲」とかはやりたくてもイデオロギー色は極力排し、経済成長を追及してそのおこぼれを配分する、社会党や総評も強かったのでその主張を取り入れ、「ケインズ政策」も進めるというものだ。資本主義が行き詰まり、それがやっていけなくなったので、労働者民衆に対してむき出しの敵意を画さず、改憲も訴える傍流の中曽根が登場したのである。
だから彼のやる政策は、マスコミ等も巻き込みつつ「このままでは日本はダメになる!」といった危機感をあおり、左と対峙しながら民衆の支持を取り付けるというものだった。そこには一応「資本主義の危機に対応する!」という大義名分がある…そこでの対決に、左の側は大敗したので、中曽根「臨調・行革」路線は一定成功し、日本帝国主義は90年代に生き延びることになる。
対して、憲政史上最長の在任を誇る安倍政権は、どうか?
確かに資本主義の行き詰まり情況は、80年代の中曽根時代よりも進行し、どうしようもなくなっている。乗り切り策としての新自由主義政策…それは中曽根から小泉に引き継がれた…も、格差の拡大と社会の分解を推し進め、かつ資本主義そのものの持続可能性すら疑われるようになった。左の「薔薇マークキャンペーン」のみならず、保守の側からも新自由主義政策に反対する、ケインズ政策に戻ろうとする潮流が出てきている。
だが安倍政権はそういった「危機意識」を前面に打ち出して「改革」をやろうとする政権ではない。ただただ政権維持のため、「一億総活躍」だの空虚なスローガンを繰り返し、なんかやってる「ふり」だけして、民主党政権における民衆の失望に「のみ」乗っかって政権を維持してきたものだ。安倍の「危機アジり」は政権浮上のための朝鮮・韓国敵視のみである。少子高齢化を「国難」と称して選挙を闘ったこともあったが、そんなものは随分前から問題だったし、それを解決する「改革」案なんか安倍は提起できていなかった。中曽根のように、資本主義の危機をアジって、それを乗り切ろう!という政権ではない。
もちろん安倍政権は一時政権の時の「教育基本法」改悪や、集団的自衛権を認める安保法制、共謀罪の新設等、イデオロギー的に右寄りでかつ国論が二分されるような案件については、強行採決などの強い意志をもってやてきたし、「改憲」も推し進めようとしている。それは注視しないといけない。ただ中曽根が目標とした「改憲」は、彼の発言「行革でお座敷を綺麗にした後、床の間に立派な憲法を掲げる」に見られるよう、彼が資本主義の危機に対応して乗り切るための国家改造…「戦後政治の総決算」終了後の総仕上げと位置付けていた。それに対し安倍の「改憲」は、どうも彼の個人的名誉…「改憲をした宰相として名を遺す」に裏打ちされているようだ。資本主義危機の乗り切りとしてあった自民党改憲草案もどうでもよくて、「9条加憲」論や「お試し改憲」なんて論法が出てくることからもそれが伺える。
中曽根も多くの自民党政治家と同様、カネと疑惑にまみれた政治家であった。ロッキード事件で有罪となった田中角栄の後ろ盾があって総理になったわけだし、本人にもリクルート事件をはじめとする疑惑があったが、結局うやむやにされた。ただしそれは「自民党政治」という大きな枠組みの中に位置づけられ、保守の中においては一定「正当化」もされるものであった。
だが安倍がまみれている疑惑…モリカケから「桜を見る会」まで…は、その「自民党政治」をも私物化し、自らとオトモダチを優遇するために使っているというものだ。レーニンが喝破した「帝国主義の腐朽性」を地で行くもので、また動く金額もセコいといえばセコい。そのくせ「政権の危機」につながりそうになれば、官僚機構総出で隠蔽、改竄まで行う。本人や閣僚も「息を吐くように」ウソの答弁をする、あるいは答弁も説明もしないまま逃げる。中曽根も「二枚舌」と言われ、ウソやごまかしをやったわけだが、ここまでは酷くなかったのだろう。
中曽根がやった「国鉄分割・民営化」では、自殺者が200名以上でたと言われている。彼がやった国家改造、「臨調・行革路線」は巨悪である。それに比べると、安倍のやってることはコソ泥、小悪なのかもしれない(それでも官僚が死んでいる!)だが、我々はこの小悪ですら打倒ることが出来ていない。そして小悪がのさばり、居直る中で、日本社会が持っていた倫理や論理も確実にぶっ壊れていく。中曽根は総評・社会党をぶっ壊し、左翼をぶっ壊した。小泉は左翼がいなくなった後、調整機構として残っていた自民党をぶっ壊した、そして安倍は自らの保身のため、日本社会をぶっ壊そうとしている。
中曽根を打倒することは出来なかったが、その悔しさを含みながら、
中曽根より「小悪」の安倍打倒に邁進しようではないか!
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