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放射能被害は、見えにくい

 「東京五輪がもたらす危険ーいまそこにある放射能と健康被害」(東京五輪の危険を訴える市民の会編 緑風出版2019年9月)を読んだ。編集者は渡辺悦司さんである。
第1部 東京五輪の危険を警告して発言する科学者・医師・市民
第2部 東京五輪での被曝が危険なこれだけの根拠
第3部 避難者たちが体験した被曝影響と症状
_0001_20200124201701 の3部構成となっており、1部はどちらかというと各執筆者等の危機感と、被曝を強要する日本政府他に対する「闘争宣言」。第3部は三田茂医師や渡辺悦司さんの分析の他、避難者の証言がなどがあって興味深いものだ。科学的な被害のメカニズムや数の推計は、第2部に記載されている。
 というわけで、第2部から福島原発事故の影響がどのぐらいあるのか?という説明や、放出された放射能汚染の度合いはどのくらいか?ということを読み取るわけだが、これがなかなか分かりづらい…それでも、こんな表現が成されている。
 第2部の第1章 福島事故の放射能放出量(渡辺悦司)には
 広島原爆の放出放射能と比較すると、大気中放出量はセシウム137ベースでおよそ600発分であり、上に述べたように最近の研究(日本学術会議2014,UNSCEAR2017報告)では、そのうちのおよそ27%が日本の陸土に降下したと推定されているので、160発分程度が日本の陸土に沈着した計算になる。(p89)
 とある。広島原爆の160発分の放射能汚染とは凄まじいものだとなんとか”理解”できるが、一方、別のページ(第1部になるが)には
 例えば、最も問題になっているセシウムは、福島事故から出た量は、おそらく50㎏ぐらい、それが、今では、ほとんど地球の北半球全域に分散している。(p70)とある。たった50㎏しかない物質が、すごく広く浅く飛びまわっているというのだ!感覚的に全然!分からない!
 では福島原発事故で放出された放射能により、どれだけの人に被害が出るか?という前に、日本政府が「安全だ」「帰還せよ」と言っている放射能レベルでどのくらいの被害が出るのか?第5章 原発事故健康影響「全否定」論の新展開とその自滅的本質(渡辺悦司)で、ICRP(国際放射線防護委員会)・UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)・BEIR(電離放射線の生物学的影響に関する米国科学アカデミー委員会)などのリスクモデルでも、致死線量以下の被曝一般について、とりわけ低線量被曝について「がん」「遺伝的影響」のリスクを、放射線被曝によるリスクとして認めていること、そしてそれは日本政府傘下の研究機関。放射線医学総合研究所の文書が公式に認めていることを紹介した上で
 そこでは、10万人が0.1Gy(100mSv)を被曝した場合(すなわち集団線量1万人・Sv)、がん(固形がんと血液がんの合計)による致死リスクを、最小でICRP2007年報告の最小426から最大でUNSCER2000年報告の1460と記載している。つまり、同表によれば、リスク係数は1万人・Svの被曝あたり426~1460件の生涯期間における過剰がん死である。(p125)と紹介している。
 これはどうゆうことを意味するのか?10万人が100mSv被曝すると、426~1460人が「過剰に死ぬ」ということだ。そして帰還政策について次のように述べている。
 日本政府は、20mSv/y以下の地域への住民の帰還と居住を認める方針である。つまり、避難解除地域に5年間居住すれば、帰還した住民は。政府自身が、被曝影響が「ある」とする100mSv(上記の0.1Gy)の被曝をすることになる。20mSv/y地域に帰還する住民の数をおよそ10万人と仮定しよう。これはそれほど現実からかけ離れた仮定ではない。上記の放医研の表に2通り100万人が100mSvを被曝する例と一致する。
 そうすると、5年間の被曝に対して、426人~1460人の追加的な(過剰な)がん死が生涯期間(50年間)を通じて生じることになる。50年間では減衰を考慮してこの6倍(10倍ではなく)、約2560人~8760人の犠牲が出る想定になる。(p127)
 もちとん渡辺氏はこれは「低い」想定であるとしており、これを批判しているわけだが、同時に「安全だ」「帰還せよ」と言っている政府の機関が過剰に死ぬこと、被害が出ることを認めていると論じているわけだ。
 で、50年間で10万人のうち、2560人から8760人が過剰に死ぬ…ということを、乱暴に1年に均せば51.2人~175.2人となる。どなんだろう、10万人の人間集団の中で死亡する人間の数が、年間50~175人増加することは、統計上うまく現れるのか?また、放射能による障害はおそらく年が経つほど増える…だから初期のうちは増えない、過剰死は初期のうちはほとんど出ないということが考えられる…そうすると、余計に「統計上」は現れないであろう。被害があっても、科学的(統計学的)に「無いもの」とされてしまうのだ!?だから放射能被害は。見えにくいということが分かる。
 しかし、「過剰死」にあたった人にとっては、年間50~175人のうちに入ってしまった人にとっては、放射線被曝がなかったら(原発事故がなかったら)死ななくて済んだわけだ。そして年間50~175人に、誰が当たるのかは全く分からない、ロシアンルーレットみたいなものである。ロシアンルーレットをいつもやっていて、誰かが確実に死ぬ現場になんか、誰も行きたくないだろう。誰も「過剰に」死にたくも、病気もしたくない…だから放射能がばら撒かれたところから避難する権利は、誰もが持っているのである。

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