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コンクリート船を見に行く闘争

 先日、仕事関係で広島方面に行く用事があったので、ついでに戦時中につくられたコンクリート船「武智丸」が防波堤として使われている所を見に行った。コンクリート船というと、そんなモン浮かぶのか?と思う人もいるかも知れないが、鉄の船だって浮かぶのだから、コンクリートで船の形を作れば浮かぶのだ。
 コンクリート船の話は、小林一輔先生の著書「コンクリートの文明史」(岩波書店 2004年10月)で知った(小林一輔先生については、こちら)コンクリート船は戦時中、鋼材が不足したため建造されたものだが、提案したのは武智正次郎という人。1941年12月に東条英機首相と海軍艦政本部長にコンクリート船建造の建白書を提出している。その後、武智の土木会社がコンクリート船を建造することになり、造船所が加古川の塩田跡に設けられた。最初は動力の無い特殊油槽船を建造し、1944年~45年にかけて自航できる総トン数840トン、全長64.3m、幅10m、積載貨物量940トンの第一~第三武智丸が建造されたのである。なお、コンクリート船は当時も「泥船」と揶揄されたものだが、戦時中は米軍もコンクリート船を大量に生産しており、総トン数2000トンクラスの貨物船や油槽船を104隻建造している。船としての性能はともかく丈夫で、瀬戸内海で触雷してもびくともせず、揺れが少なくて乗り心地も良かったそうだ。

 場所は、広島県呉市安浦である。JR呉線の安浦で下車。
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 駅員さんがワンオペで対応している。待合室が改装されていて、綺麗だった。

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 昔は安浦町でした…目的とする三津口港は、駅から歩いて15分ほど…「武智丸」と書かれている。

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 国道沿いに歩いて、漁港に到着…

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 おお、コンクリート船が2隻、並べられている!

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 一応、立ち入り禁止となっているが、フェンスは開けっ放し…先ほども牡蠣を食いに来た観光客とおぼしき人たちが中に入っているのを確認している。どうやら近所の人が管理していて開けてくれる らしい。

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 由来を示す看板…台風被害を避けるため防波堤の建設を依頼していたところに、コンクリート船を払い下げてもらって設置したもの。

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 フェンスが開いているので、中に入ってみた…手すりは簡易なものだから、観光客用でないことは分かる。手前の船は半ば土砂に埋もれている。
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 かなり立派なつくりで、大きい船であることが分かる。

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 細かな部材は風化が進み、外に近い鉄筋は錆びている。
 「コンクリートの文明史」で小林先生が述べておられるところによれば
 私は2002年までに数回現地を訪れ、二隻の武智丸をつぶさに調査した。潮風に約60年間曝されてきた船体はいまでも健在であった。強度も設計当時の値を保持している。それだけでも十分に驚きであったが、さらに意外な事実が判明した。船体のコンクリートには信じられないほど多量の塩分が含まれていたのである。コンクリートを練り混ぜるときに使用した砂が原因である。それは、造船所建設の際に掘り起こした廃墟塩田の砂であった。ところが、それにもかかわらず、しかも驚くべきことに、内部の鉄筋はほどんと腐食していなかった。(p156~157)
 コンクリート中の鉄筋は、コンクリート中の塩化物イオン量が1.2~2.5㎏/㎥以上になると発錆するとされている…おそらくそのくらいか、それ以上の塩分量が検出されたのであろう…それでも内部の鉄筋は錆びていないというのは、いかに密実なコンクリートが打設されていたのかということである。しかし、今回確認したように表面に近い部分の鉄筋は錆びが進んでいる。

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 船端にも、コンクリートの浮き、それによるひび割れが見受けられる…少し蹴ってみると、落ちそうだ!内部の鉄筋の腐食は進んでいると思われる。さすがに建造から70年以上が立つと、こうなってくるのだ。
 このコンクリート船防波堤を「産業遺産」的に保全しようとすると、難しいだろう。鉄筋が錆びないようにするためコンクリート補修や塗装をするにしても、建造時の雰囲気を損なわないように材料等を選ばないといけない。防波堤としての役割はまだまだ果たせるだろうから、撤去して別のところで保存するわけにもいかない(だいたい重量がありすぎる!)…結局、このままここに留め置かれて、ちょっとずつ朽ちてゆくのを見ているしかないのであろう。
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 後ろを振り返ってみる…実は吊りをしている人がいた。この人がいるので、フェンスが開きっぱなしになっているようだ。(この人が管理者?)

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 早々に引き上げることにする…漁港周辺には、牡蠣を生産・加工・販売しているところが沢山ある。

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 おまけ…呉線を始め、広島地区で活躍する227系電車…こちらはセミクロスシートで運行中。
 ではでは…

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