経済・政治・国際

2000万円足りない年金問題について(前篇)

 本日、都内で「年金返せ」デモが行われた…Y!ニュース毎日新聞より
都内で「年金返せ」デモ 報告書・麻生氏受け取り拒否など受け
 夫婦の老後資金に関する金融庁の金融審議会市場ワーキンググループ(WG)報告書を巡り、麻生太郎副総理兼金融担当相が受け取りを拒否したことなどを受け、政府の年金政策に抗議する「年金返せデモ」が16日、東京都内で開かれた。
 デモには主催者発表で約2000人が参加。千代田区の日比谷公園から6グループに分かれて銀座方面へとデモ行進し、「生活できる年金払え」などと気勢を上げた。
 参加した女性(50)は「(政府の姿勢に)とにかく怒りでいっぱい。くらしを守るよう、みんなの声で変えたい」と訴えた。年金受給者の男性(68)は「報告書を受け取らず、無かったことにしようとしている。フェアではなく、許されない」と話した。【山下浩一】
 
 老後に「年金が足りない」から2000万円貯蓄しておくよう…という元ネタの報告書は金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」pdf というもので、要するに「少子高齢化社会なので、民衆にどんな金融商品を売りつけたらエエか?」ということを考察したもの。51ページで内容も特に難しいことを書いているわけではない。(これをロクに読んでいない麻生財務大臣は、よほど文章を読むのが大嫌いなのだろう)で、問題の部分には、こうある…p8~p10にかけて(図もある)
(2)収入・支出の状況
ア 平均的収入・支出
 わが国では、バブル崩壊以降、「失われた 20 年」とも呼ばれる景気停滞の中、賃金も長く伸び悩んできた。年齢層別に見ても、時系列で見ても、高齢の世帯を含む各世代の収入は全体的に低下傾向となっている。公的年金の水準については、今後調整されていくことが見込まれているとともに、税・保険料の負担も年々増加しており、少子高齢化を踏まえると、今後もこの傾向は一層強まることが見込まれる。
 支出もほぼ収入と連動しており、過去と比較して大きく伸びていない。年齢層別に見ると、30 代半ばから 50 代にかけて、過去と比較して低下が顕著であり、65 歳以上においては、過去と比較してほぼ横ばいの傾向が見られる。
60 代以上の支出を詳しく見てみると、現役期と比べて、2~3割程度減少しており、これは時系列で見ても同様である。
 しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
 で、ここに問題のグラフが来て…p16に
(2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
 と書かれているのが問題になっている。で、毎月の赤字額5万円の根拠となっている「高齢者無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」(出典)第21回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料)では、収入が年金収入も含めて209,198円(年金と思しき社会保障給付が19万円ぐらい)、支出が263,718円となっている。なお、一般のサラリーマンと専業主婦の「標準世帯」でもらえる年金額が22万円と言われているので、それよりも若干低めの収入ってわけだが…
 それでも結構あるやん!ってのが、私の感想だ。
 前にも書いたが、私の父母は父親の会社は厚生年金に加入してなかったので、公的年金は一切もらっていない!代わりにバブルの頃にあった保険商品…1度に大金を掛けて振り込むと、一定額を終身でくれるという保険(今、そんなおいしい保険商品はない)に加入し、二人で年額150万円ぐらいで生活していた…月当たり12万5千円である。(実際は年に私や兄が30~40万円補助していた…+40万円だとしても月当たり15万8千円である)ちなみに国民年金だけだと、満額でも一人当たり6万円強ぐらいだそうなので、夫婦二人で12万5千円というのは、国民年金のみもらっているのと大体同じになる。

 父母がどのくらい貯蓄があって、いくら取り崩したのかは分からないが…月に20万もらう、あるいは26万円も支出できるならば…かなり贅沢が出来たのでは?と思うぞ。山海の珍味とまではいかずとも、美味い肉を食って、外食して、年に1回、旅行に行って、夏冬はエアコンをバンバンかけて…いぁや~「平均」って、オソロシイわ❗❗

 実際のところ、父母は特になんの趣味ももたず、旅行にも行かず、外食もしない…大病で医療費がバンバンかかったわけでもないし、介護も必要なかった。(今、母親はちょっと訪問看護師さんに来てもらっているが、それにかかる費用は私が持っている)テレビはBSもつけず、携帯電話も持たずネットもやらず、本も買わず、新聞以外に定期購読するものはナシ…
 そのかわり、持ち家だから住居費はとても安い固定資産税のみ、車もってないから、保険料等の維持費もいらない…というところもあるが…
 
 問題は「健康で文化的な生活」水準のため、どのくらい年金収入が必要か?それは年金で保障されるのか?ってことだろう。
 
 先ほど、国民年金では、満額で6万円ほど…と書いた。これが「生活保護」だと住宅扶助とかも含めれば、もっと出る…実際問題、一人暮らしで賃貸住宅に住んでいて、月に6万円しかもらえなければ、それだけでアウトだ!家賃でほぼ年金がふっとんでしまう。若い人の中には、年金払っても将来「もらえない」「減額される」というのであれば、生活保護のほうがマシだと考えている人もいるのである。

次回は、もう少し詳しく見てみよう。

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蓮池透氏は我々が考えているような人物とは違うのかも知れない…

 ちょっとびっくり?ニュースが飛び込んできた…Y!ニュース毎日新聞より
蓮池透氏が「れいわ新選組」から出馬へ 参院選視野
 北朝鮮による拉致被害者の蓮池薫さんの兄、蓮池透氏(64)は31日、今夏の参院選をにらみ、山本太郎参院議員(44)が代表の政治団体「れいわ新選組」から出馬する意向を表明した。東京都新宿区の事務所での記者会見を動画で公開し「地方は疲弊し、惨たんたる状況で何とかしないといけない。『ネットで悪口ばかりを言っている』と批判されてきたが、(政治の場の)オフラインで自分の言いたいことを言おうと決めた」などと述べた。
 蓮池氏は元東京電力社員で、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の元事務局長。同団体は衆参同時選挙を想定して寄付金を募っており、会見に同席した山本氏は30日までに約1億5000万円が集まったことを明らかにした。【山口朋辰/統合デジタル取材センター】

 な、なにぃ~ 山本太郎と蓮池透❗いったいどういったつながりがあるのか?
 もっとも、2000年代は「拉致問題」で家族会の事務局長として、朝鮮への強硬路線を振りかざしていた「ような」人という認識であった。ただ拉致問題が膠着する中、路線対立的なものもあって、一線からは退いている。最近では「リテラ」のこの記事のように、安倍政権の拉致問題への取組や圧力一辺倒の対挑戦外交を批判している。
 また柏崎刈羽原発のお膝下に住み、東電社員でもあったことから、原発には否定的で「告発~日本で原発を再稼働してはいけない三つの理由」(ビジネス社)や「私が愛した東京電力 福島第一原発の保守管理者として」(かもがわ出版)なんて本を出している。反原発・脱原発ということで、山本太郎氏とのつながりが出来たようだ。

で「新選組(山本太郎の新党をこう呼ぶことにする)」から選挙に出る「候補者1号」としての会見の様子が、ハーバービズネスオンラインのこの記事である。これを読んでみて、蓮池氏が「拉致問題と反原発」だけの人ではない…ということが、良く分かった。どうかリンクを開いて読んで欲しい。
 山本太郎氏の、こんなところに共感したんだそうな…
 当初は反原発の旗手という形で政治をやってこられましたが、この6年間、いろいろな施策を展開しておられまして。そのへんにも非常に。国民の皆さん一人一人の目線から、それこそ皆さんのために政治をやっている。
 その原点。このままでは国が壊れるんではなくて、人が壊れてしまう。そういう危機感。これは私も非常に共感するところであります。

 ここに蓮池氏の資質も、ちゃんと出ているのではないだろうか?
 
 山本太郎氏や「新選組」は、ほぼ確実に左翼ではない…むしろ保守的でまじめな人をターゲットにしているのだろう。そして蓮池氏も保守である…だが、私たちがイメージしている蓮池氏とは、実は全然違う人だったのではないだろうか?そんな気がしてきた。

 選挙情勢がどうなるかは分からない…ひょっとしたら「野党共闘」がらみで立候補がなくなるかもしれない…が、山本太郎と”愉快ななかまたち”に加わった、蓮池透氏は注目されてもいいだろう。

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共産党はケインズ党!?

 統一地方選挙が終わり、薔薇マークキャンペーンが認定した候補者は前半が15人、後半は7人が当選したそうだ。
 これまでの認定候補者は、4月20日段階で59名ということである。で、この政党別内訳けを見ると、以下の通りである。

共産党   23名(50.4%)
立憲民主党 5名(8.5%)
自由党   5名(8.5%)
国民民主党 1名
社民党   3名
新社会党  5名(8.5%)
諸派    2名
無所属   15名(25.4%)

 この内訳はあくまで選挙で立候補する時の所属であるから、例えば宮本たけし氏のような共産党だけど無所属というのは無所属としている。さて地方選挙だから無所属の認定候補者が多いのはともかく、党派では共産党候補者の認定数が半数を占めている。

 よく考えてみると、薔薇マークキャンペーンは、共産党が普段主張していることと「かぶる」主張が多い。曰く、消費税廃止や消費税増税反対、医療や福祉、教育に予算をまわせ、金持ち優遇税制をやめ、大企業に相応の負担をしてもらおう…等々。共産党は、松尾匡氏らがごちゃごちゃ言う前から、ちゃんと「経済」を語っていたわけで、足りないのは中央銀行による財政ファイナンスの視点ぐらいのものだ。
 薔薇マークキャンペーンは、ケインズ政策を採るように主張しており、共産党もとっくの昔にマルクス主義による革命なんか捨てちゃっている。昨今、日本共産党は名前を変えるべきなんて意見も出ているようだが、さしずめ日本共産党は、日本ケインズ党であると言えるだろう。(日本では自由でも民主主義でもない政党が「自由民主党」を名乗り、公明正大でない政党が公明党と名乗っている…政党名なんか「屋号」であると考えたほうがエエ…だから「新選組」もアリなのだ。)
薔薇マークキャンペーンは共産党の主張である…などと評論する方もいるようだ。

 ではなぜデフレ脱却の「経済」を語ってきた共産党が、全然支持されていないのか?
 
 共産党が、松尾匡氏らが言うところの「左派1.0」だからか?新左翼なある人になぜ共産党が支持されない?と聞いたら「ジェンダー問題にたいする取り組み、考え方がなってない」からとの回答…古~い左翼の悪弊をひきずっているからだというわけだが…それでも疑問は残る。いや、若い人が支持しているらしい自民党なんか、もっとジェンダー問題とかに対する考え方って、エエ加減でしょ?なんで支持されているわけ?
 そうそう、普通の人であれば、「左派2.0」的な考え方を「すっとばして」支持政党を決めている、ならば経済を語る共産党へ支持が向いてもエエわけだ。欧米では、「古い」左翼的な考え方であったハズの、サンダースやコービンが若い人から「新しい潮流」として支持されている。そしてサンダースやコービンも、もともとの古い土台、米民主党や英労働党を基盤としている。

 この辺の謎解きをしておかないと、単に「左派1.0と2.0の違い」「左派2.0が経済語って3.0へ」と言っている薔薇マークキャンペーンも、結局は「共産党の2番煎じ」とみなされ、歴史の屑籠に捨てられてしまうだろう。

考えるあるみさんのブログ 更新

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なぜ大阪で維新が強いか?の論考紹介

 国政で維新は退潮しているが(とはいえ全国の人は油断してはいけない)、相変わらず大阪では維新勢力が強い…この理由として、興味深い論考がHARBOR BUSINESS Online(ハーバー・ビジネス・オンライン)に掲載された。4月11日掲載の誰が「維新」を支持したか―大阪・首長ダブル選挙の光景から である。本記事は「誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走」(2015年11月 140B)を著した松本創氏によるものだ。
 松本氏はW選挙で維新の街頭演説を聞く人びとを見たり、意見を聞いたりして「橋下徹の登場に熱狂し、敵をぶった斬る攻撃的な言動に拍手喝采を送っていた聴衆はもういない。」「演説に対する反応や短い立ち話から、彼らが最も期待しているのは「大阪を成長させる経済浮揚策」なのだろうと感じた。それは市や区など狭い地域単位の利益誘導ではなく、個々人の賃金や税金に直結する話でもない。大阪府域全体に利益をもたらし、活性化させる政党として、さらに言えば、日本の中での大阪の都市格や存在感を復権させる牽引役として、彼らは維新を評価しているのではないか」と述べる。橋下が維新を起ち上げた当初のあり方と変わり、維新も聴衆も穏健になった、質が変わったようだ。その上で「維新は確実に大阪に定着し、「市民党」となった感がある。」と述べている。 そしてW選挙における自民党大阪府連の対応のまずさ(維新の躍進はこの敵失に助けられた面もある)に触れた後、「維新支持の分析 ポピュリズムか、有権者の合理性か」(有斐閣 2018年12月 善教将大・関西学院大学准教授)を紹介する形で「なぜ維新は勝ち続けるのか。それは『大阪』の利益の代表者だという政党ラベル(ブランドイメージのようなものか)を獲得し、有権者もそこに期待を寄せたからだという。」「重要なのは、ここで言う『大阪』とは、大阪市という行政区域に限定されない『抽象的な都市空間』を指していることだ。大阪の有権者は、個々人の地元という狭い範囲の利益ではなく、より集合的な『大阪』の利益を求め、政党ラベルを手掛かりに、自律的かつ合理的に維新を選択した、というのである」と述べる。「より集合的な『大阪』の利益」を「大阪ナショナリズム」と呼ぶならば、維新は「大阪ナショナリズム」を基盤に置く地域政党として自らを確立し、それを大阪、関西の人が一定支持していることが浮かび上がる。
 このことを念頭に、衆議院大阪12区補欠選挙における維新の街頭演説をチェックしてみよう…YouTubeを検索すればいくらでもヒットするが、1~2個みれば十分だ…自民党批判、他党派批判そして「既得権益批判」があるが、相手を完膚なきまで叩き潰そうという激しさは見られない。既得権益批判について、批判対象は「(改革をやらない)議員集団」というぼんやりしたもので、維新発足当初における公務員や行政という身近で目につきやすいものではない。国政選挙であるので「大阪ナショナリズム(おそらく万博や空前のインバウンド需要)」についてはあまり述べられないが、それでも「政党の本拠地を大阪においているのは維新だけ」、あるいは大阪で「改革」が進んでいることを取り上げ「大阪ナショナリズム」をくすぐっている。その上で「教育無償化」を説き、自民党の(改革や改憲の)背中を押す「ダイナマイト」になると訴えている。一種デマゴギーも使うような維新的手法は残っているものの、演説の勢いもいいので、なるほど自民党にちょっとお灸を据えたいぐらいの人には十分受け入れられるものだ。YouTubeのコメント欄には「改革」を支持する人たちの激しい既得権益・既成政党批判はあるものの、聴衆にはそこまでの熱気は感じられずない。維新は「(改革を邪魔する)敵を認定して攻撃するポピュリズム手法でのし上がる政党」から「大阪ナショナリズムに依拠した、新自由主義改革を掲げる地域政党」になりつつあると、彼らの演説を見て感じた。
 維新は「大阪ナショナリズム」に依拠しているから、国政では大きな勝利を得ることはまずないかもしれない(それでも繰り返すけれど、警戒しないといけない)が、大阪・関西で今後も強い勢力を保ち続けるだろう。他の政党も「大阪ナショナリズム」そのものを否定することは、確実に支持を失うことにつながるので、ここに切り込むことは難しい。ただし維新が掲げる「大阪都構想」も、あわよくば東京に並ぶ地位を築こうという「大阪ナショナリズム」をくすぐり、それに依拠する政策なので、それに反する結果がでると市民が判断すれば、住民投票で否決される。そこで維新は「(都構想を実行しても)町並みやコミュニティは残る」と言わざるを得ないのだ。

 あとYouTube演説を聞く限り、維新は大阪ナショナリズムに依拠しながらも、高齢者福祉や教育無償化という面で、ほぼ全ての世代に配慮した政策を内実はともかく掲げていることは分かる。彼らが言う財源は「身を切る改革」なのだが、それで思いっきりお金が捻出されるわけではない。ところで「維新改革」のおかげで税収が上がったわけではないので、これらを本当に実現する、あるいはしているとすれば、彼らは実は「緊縮をさけぶ政党」ではなく、「薔薇マークキャンペーン」が言う様な「ケインズ政策をこっそりやっている政党」なのではないだろうか?とも思った。このへんは事実を積み重ねて粘り強く批判を続けなければならないのだが、維新が「緊縮政策」を採っているという批判も、簡単には受け入れられないと感じた。

 いずれにしても、敵を設定してデマやフェイクで大衆を扇動し、支持を得ている…という古い維新感は捨て、もういちど起こっていることを素直に見直して戦略を練り、地道な運動をしなければ維新には勝てないだろう。一方で維新は安倍改憲…自衛隊を憲法に位置付けるという…をはっきり支持し、それを後押しすると演説の中でもはっきり打ち出している。「大阪ナショナリズム」や福祉政策が支持されているからと言っても、このへんの批判もあいまいにしてはいけない。
戦線を立て直し、維新と安部はゴミ箱へ!

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宮本たけし氏惨敗の理由をもう少し考える

 先日、統一地方選挙で共産党の現職がぽろぽろ落選している、共産党の組織力が落ちているのではないか?と書いた。
 もっとも、大阪の場合はもう一つの原因がある。それは先の大阪市長・府知事のW選挙で、自民党が推す候補者に乗っかった…これが裏目に出たのではないかというものだ。
 もちろんあのW選挙の段階で、自民党の推薦候補にのるか、それとも自主投票的になんにもしないか(自ら候補を出して自滅という道は考えない)というのは「苦渋の選択」である。自民党が推薦してきた両候補は、決して悪い人材・人選では無かった。そこで「乗っかる」という戦略を採用したわけだが…
 肝心の自民党が、コケた!両候補を十分、バックアップすることもなく、組織はバラバラ(逆に維新のほうが組織はしっかりしている…維新はもともと自民党から分派してきた人達も多く、そのへんが自民党組織をそのまま、あるいは強化して大阪で権力を握って来た。逆に自民党は権力を失うとともに「利権」も失い…「身を切る改革」が利いている…組織力を低下させていったとされている)「共産党色」がつくことを恐れて、共闘体制も十分とらなかった…ということで、ボロ負けする。また自民党の敗因は、自民党中央、すなわち安倍政権が改憲その他で維新との関係を良好にしておきたいため、大阪自民党を見捨てた…という面もあろう。
 ただでさえ「自民党と野合」したと批判されるのに、選挙でまけたほうにつくとよけい勢いが削がれる…そこで無党派層の「反自民」が共産党に流れず、統一地方選挙後半でも維新にどかぁ~っと流れた!ということだ。

 後付けになってしまうが、W選挙で独自路線を貫き、少なくとも静観しておくという態度をとっておけばよかったという意見もある。ただこれも難しく、「反維新」を掲げる左の人たちは共産党の「お客さん」でもあるのだが、静観したら静観したで、またその「お客さん」からボロクソ言われるのだ。
 そうすると、統一地方選挙後半では、支持層からの反乱もあり得るのだ…どっちにしても勝てない。

 「野党共闘」路線はどうか?何回も書くけれど、これは選挙区に自由党・立憲民主党、社民党の支持者がそこそこ居る場合は有効だが、府議や市議にどんな党派が出ているか?地方選挙だとどこもそうかもしれないが、自民・公明・共産党、あと無所属、大阪の場合は維新がほとんど。大阪12区でみると、府議選挙は寝屋川選挙区で維新・公明・共産で争われたが、四条畷・大東選挙区では維新と公明だけが立候補して無投票で終わっている。市議選挙では寝屋川市で立憲民主党の新人が最下位当選(ちなみに1票差!で共産党候補が落選している)しているが、社民党候補は千票取れず、幸福実現党よりちょっと上ぐらいという体たらく。四条畷市には立民、社民、国民、自由党の候補者そのものがおらず、大東市は今回選挙やっていないが、民主党から2名の議員が出ている。
 他の立憲野党の支持層が少ない中、無党派層に訴える「力」が「野党共闘」にあるか?と言えば、はっきり言いましょう…「野党共闘」とは何か、何のためにやるのか…ということを普段から宣伝していない以上、別の言い方をすれば、安倍改憲を阻止する、安倍のデタラメをやめさせる運動を普段からやっていないと…一般市民は「野党共闘?何それ?」の世界なのだ。これが現実である。
 そういった中で、共産党の宣伝カーで「市民と野党の統一候補~」と何度叫んでも、空回りするだけである。

 そうすると、宮本たけし候補は、共産党として闘ったほうが良かったのか?
 そう、その通りだ!そのほうがなんぼかマシであったろう。

 だが、党中央は「野党共闘路線」を選び、宮本氏を無所属にして選挙に臨んだ…このことが、外部の他党支持者なんかからは「共産党が腹をくくった!」と好意的にとらえられた(私も実はそうだ)こともあって、全国から選挙ボランティアが1000名来た!という効果も生み出したが、それだけ外部から「野党共闘よろしく~」と頑張っても、空回りしていたのだ。

 普段から運動をつくっておいて、支持してくれそうな人を「開拓」しておかないと、野党共闘路線なんて成り立たないのである。

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宮本たけし惨敗!

 一昨日行われた、衆議院大阪12区補欠選挙では、維新の藤田文武氏が午後8時をまわってすぐに「当確」を出した…「野党統一候補」として共産党から無所属になって出馬した宮本たけし氏は、4位と惨敗!しかも得票数は1万4千票あまり、得票率は8.9%と、1割もとれず、供託金没収という情けない結果である。
 何回も書いているよう、運動の中で鍛えられた候補者を立てないと、選挙には勝てない。それでも共産党の組織を活かした選挙は出来たハズだが、共産党の基礎票すら確保できなかったようだ。前々回の第47回衆議院選挙の結果と比較すると(前回はたるとこ伸治…無所属・前民主党が希望の党の比例に回り、直接比較が難しい)、共産党候補は1万8千票とっている。前々回よりも投票率が下がり、総票数として9割程度減っていることを考慮しても1万6千票はとっていないとイケナイのだが、それを大幅に下回っている。
 「野党共闘」「野党統一候補」とする理由の一つとして、小選挙区制では野党候補が乱立するとお互いに票を食い合って、巨大与党に勝てない…よって「統一候補」とするという理由がある。当然、統一候補では各党の持つ基礎票に+αがあってしかるべきなのだが、今回はそれも見込めていない。選挙期間中は盛んに「市民と野党の統一候補」と共産党の宣伝カーが宣伝していた…「市民の…」という割には、無党派層の支持も得られず、惨敗している。
 「野党統一候補」という新しい枠組みで、自民党に一泡吹かせるためには、投票率を上げて無党派層を取り込む努力をすべきなのだが、運動体にそのようなことをした形跡は見られない…てか、何度も書くが「大阪12区市民連合SND」なんて、つい最近まで知らんかったぞ!この人たち、ホンマに投票率を上げ、無党派層をとりこもうなんて考えていたのか?そうゆう集会や企画に取り組んできたのか?
 共産党の「組織力」も落ちているようだ…今回の「維新旋風」の陰で、市議会選挙では共産党現職がバタバタと落選している。大阪12区では、寝屋川市議選挙で2名落選だ。(四条畷市では、落選は無所属の泡沫的候補者のみ、大東市は議会選挙なし)隣の門真市でも共産党現職2名落選(ついでに革命左翼 戸田ひさよし氏も落選した)枚方市も現職2名落選(ついでに維新7名が上位当選している)、守口市も3名落選だ。

 ぶっちゃけた話をすると、大阪・北河内の共産党組織において、統一地方選挙に+α衆議院補欠選挙を闘い抜く力量はもともとが無かった。そんな中で、いきなり中央から宮本たけし氏を落下傘的に下ろして闘っても、共倒れになってよけい勝てなかった…というところだろう。
 うがった詮索をすれば、宮本氏をあえて無所属にして「野党統一候補」色を強めたのは、「野党統一候補」戦術の一つのモデルケースを試みてみただけではなく、共産党だけでは闘えないので、自由党や社民党(支持者)の手が欲しかったから…かもしれない。

 おまけ…今回の補欠選挙で本当に負けたのは、自民党から出た北川晋平氏である。亡くなった前職、北川知克氏の甥にあたる人なのだが、徹底的に素人であり、可愛そうなくらい演説が下手!何がやりたいのかさっぱり分からず、前々回から大幅に得票を減らしている。ただ4者が互角に選挙戦を闘ったとしても、当確ラインは4万票であり、それは越えている。そうゆうことから考えると、無所属のたるとこ氏も敗北、維新の藤田氏が大勝利ということになる。そして宮本氏は「お話にならない」だ。

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MMTよりアナキスト!

 「そろそろ左派は<経済>を語ろう」シリーズ…先日は「独自の通貨を持つ政府は、政府債務残高がどれだけ増加しても問題はない」理論根拠、MMTを紹介 したわけだが、ホントに左翼であれば「借金しても大丈夫」ではなく、「借金は踏み倒していいんだ!」というほうがより「かっこいい」だろう。ブレイディみかこ氏の発言を紹介する。
_0001_5  「松尾さんって日本だとなんか「異端」みたいに言われているのを時折ネットで目にしますが、欧州だと超「普通のレフト」です(笑)。緊縮は本当にヤバイという松尾さんが抱いている感覚が、欧州には地べたに転がってますからね。
 わたしはアナキスト系のお知り合いもけっこういるのですが、「債務を帳消しにしろ!」「借金なんて踏み倒せ!」っていうのは一種のアナキストでもあります。実際、欧州の反緊縮運動はアナキストが引っ張って来たという側面もあります。アナキストっていうのは別に貯金とかなくてもぜんぜんいい人たちだから、みんな「財政黒字とか、国が人から集めたお金を貯金してどうすんだよ」とか言ってるし(笑)。(p125-6)」
 で、民進党代表(2017年当時)の蓮舫氏が「財政均衡を憲法に入れたい」などと述べたことを批判して、こう続ける…
「緊縮憲法とか提案している人たちもわかっているだろうから、別のアジェンダがあるんだろうなと思います。クルーグマンも書いていましたが、「借金を返す」というお題目が、「小さな政府」にして新自由主義を進めることのもっともらしいエクスキューズになるんです。だからアナキストは「借金なんか返すな!」とアジってるんです。そもそも借金を返すのが目的の国って何なんですか。それを「財政規律」だとか…アナキストは「規律」とかも大嫌いですからね(笑)。本当に、日本では左派がものすごくまじめで、「財政を健全化しないと」って言われると、そうか、それが正しい人の道だよな、と素直に思うから反緊縮運動が盛り上がらないのかなと。アナキストは、「道徳なんかぶっこわせ!」っていう人たちだけど、日本だと「道徳的に生きることが左派の道なんだ」って思われている。(p127ー8)」

 日本の左派が道徳的であるかはともかく、例えば自民党の「金権政治」や「政財官の癒着」…さらには「忖度政治」を批判するにあたって、彼らより「道徳的」にならないといけないという側面はあるだろう。だけど、「借金なんか踏み倒せ!」なんてアジは、なかなかしなかったなぁ~…おお、そうじゃ!80年代「国鉄分割・民営化」が臨調・中曽根行革という新自由主義政策のメインに掲げられたときは「国鉄は赤字でいいんだ!」と訴えていたと思うぞ。別に(ブルジョワ)国家が赤字で倒れてもいいんだ!と開き直っていた…そうか、そうゆう「開き直り」を許さないのも「国鉄分割・民営化」攻撃の目的であったんだなぁ~。
 で、次の章(補論1 来るべきレフト3・0に向けて)の中で、ブレイディ氏らの対談は、イギリス・ブレア政権の「ニュー・レイバー」下でのアナキストの状況にも触れられる。曰く、「アナキストの「自律」志向がブレア流の「第三の道」ではうまいこと市場原理を補完するものにされてしまった。(p144 松尾氏)」と…「国なんかいらない、仲間同士でやっていける」という主張は、「小さな政府」と意外と相性が悪くなかったのである。ひゃー…ブレイディ氏も続けて「そうなんです。わたしは、そこにはちょっとアンビヴァレントな気持ちを持っていて、「政府に頼らずに仲間をつくってやっていける人たちはいいけど、できない人も現実の世界にはいるよね」って思います。それに、勤めていた託児所が緊縮財政で潰れましたから、仲間同士でやっていくことの限界も体験しました。(p144₋145)」
 このブレイディ氏の体験は、安易に「生産協同組合」が成り立つことは難しいということも示しているのだが、もし「借金なんて踏み倒せ!」で外の経済が壊滅した場合は、これでやるしかない!というのも事実である。

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「アベノミクス」評価と「金融緩和」訳語問題

 「そろそろ左派は<経済>を語ろう」シリーズ…松尾匡氏らは、アベノミクスについてどう語っているのか?
 _0001_4 まずアベノミクスには「三本の矢」がある。「異次元的金融緩和(第一の矢)」「機動的財政出動(第二の矢)」そして「民間投資を喚起する成長戦略(第三の矢)」である。本書の主張はケインズ政策であり、「金融緩和と政府支出の組み合わせ」というのは、デフレ不況(需要不足)に対する普通にケインズ政策の枠組みと同じなので、なにも問題はないし、安倍首相の独創でも占有物でもない。また欧州ではかなりスタンダードな左派の経済政策でもあり、英労働党のコービンは「人民の量的緩和(People's Quantitative Easing)」と言っている。要するに第1の矢と第2の矢は「有効」なのだ。
 問題は「第三の矢」で、同じ政策のパッケージに入っている必要は全くない…「「第三の矢」は小泉構造改革を継承するネオリベ的な天井の成長を意図した規制緩和路線ですから、需要側に注目した(「第一の矢」「第二の矢」の)ケインズ主義的な枠組みとはまったく異なるものというか、むしろ景気回復の足を引っ張るような政策です。でも、「アベノミクス」という言葉で二つの政策を一緒くたにしてしまうと、そういう違いが何も見えなくなってしまいます。」(p168)すなわち「第三の矢」だけがネオリベ政策であり、松尾氏に言わせれば「アクセルとブレーキを同時に踏んでしまっている」のだそうな。だから効果がないのである。
 また「第二の矢」の財政出動についても、「人民の/人々の」という意識に欠けており「有権者の一番の関心は景気問題なので、そこに注力してきただけなんですよ。そうすると、政策が非常に中途半端なものになるんですね。たとえば、本来金融緩和とセットになっている「第二の矢」の財政出動のほうを見てみると、一応政権発足後1年ぐらいは積極的な財政出動をやっていたんですけど、そのあとは財政赤字の増大を恐れて引き締めにまわっています。いつも選挙前になると、テコ入れのために一時的に積極財政をとるのですが、それが終わるとまた引き締めるということを繰り返してきました。」(p173)と手厳しい。だから「野党は『アベノミクス』の良い部分(金融緩和と財政出動)は継続して、お金の循環のさせ方を変えます。という方向でいけばいい」(p175)のだそうな。そして、お金の回し方も変える「本来は、社会保障費を削減するのではなくて、景気対策として社会保障分野にも投資するのが、左派本流の経済政策です。本当に財政出動すべき分野はたくさんあります。たとえば、子育て支援がその最たるものでしょう。それで子どもが生まれたほうが、将来税金を納めてくれるんだから、財政的にもいいに決まっています。(中略)少子高齢化を心配するんだったら、低すぎる保育士さんの給料も上げなければいけませんし、保育所も増やす必要があるでしょう。介護についても切迫していますから、たくさんお金をかけて取り組むべきです。奨学金など借金を抱えて大変な学生さんもたくさんいますし、大学の学費を無償にするとか、給付型の奨学金を充実させることも必要な政策だと思います。」(p177~8)要するに、旧来型のハコモノ、インフラ系公共事業…それこそオリンピックやカジノ、万博に代表されるようなもの…を止めて、旧民主党政権が掲げたスローガン「コンクリートから人へ」を実践すること。これが「左派」がとるべき経済政策なのだ。
 ではなぜ「アベノミクス」総体がボロカスに言われるのか…「Monetary Easing」の訳語を「金融緩和」としているため、これが通貨量を増やす(緩和する)意味でなく、なにか「金融自由化」の一種の「ネオリベ」新自由主義政策のようなイメージでとらえられるからである。また「金融緩和」だけでマネーをジャブジャブ出しても、「財政出動」のやり方が間違っているから、全部「資本」のほうにいってしまい、需要は増えない。デフレのまんま、株価だけは上がる…ということになるからだ。

 もっとも訳語問題は、「経済成長」の語もそうであるが、定着してしまっているので今さら変えられない…ということもあるのだが。

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「左派ポピュリズム政党」はMMTを理論支柱とするだろう

 先日山本太郎は「左派ポピュリズム政党」を目指すのか?で、お友達のkuronekoさんに好意的に取り上げていただき、またコメントもいただいたので、向こうのブログ記事 にもコメント返しなんかをしておいた。「左派ポピュリズム」という言葉が「新鮮」だったようですが、もともとポピュリズムには、既成政党ではとらえられない民衆の不満・要求をすくいあげて、扇動・宣伝していく政治手法であり、そのアプローチは左右どちらからでも行えるわけ。ポピュリズムの事例として挙げられるアルゼンチンのペロニズムは、労働者階級の要求に答えようとする「左派ポピュリズム」であったし(理論的なものはイタリアのファシズムから学んでいる…ファシズムとポピュリズムの違いについては詳しく述べないが、議会外の大衆運動に依拠するか、選挙そのものに重きを置くかぐらいで理解しておいたほうがよい)、イタリアの「五つ星運動」なんかも「左派ポピュリズム」として位置付けられている。また、薔薇マークキャンペーンと市民社会フォーラムの企画にそろそろ左派は<ポピュリズム>を語ろうというのもあることを紹介しておく。

 で、「左派ポピュリズム政党」が掲げるであろう、薔薇マークキャンペーン的な主張…消費税を5%に引き下げ、財政拡大を行う「反緊縮」政策の理論的支柱となるのが、「MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)」である。ロイターの記事から
焦点:財政拡大理論「MMT」、理想の地は日本か 
 [東京 8日 ロイター] - MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)が、注目を集めている。独自の通貨を持つ国の政府は、通貨を限度なく発行できるため、デフォルト(債務不履行)に陥ることはなく、政府債務残高がどれだけ増加しても問題はない、という考えだ。米国では、激しい論争を巻き起こしているが、財政が膨張しながら低金利にとどまる日本は理想の地なのか──。金融緩和策に限界論が出る中で支持が広がるか、市場の関心も高い。(以下略)

 「TPP亡国論」を著した保守の評論家、中野剛志氏も、東洋経済オンラインで2回にわたってMMTを紹介している。リンクのみ貼り付けると
アメリカで大論争の「現代貨幣理論」とは何か
異端の経済理論「MMT]を恐れてはいけない理由
 ざっと読めば、「信用創造」の観点から、貨幣の見方を見直したもの…「貸し出し」そのものが「預金」を生み出すというものなので、中野氏がいうところの、「天動説と地動説」「パラダイムチェンジ」という言い方がまさにぴったりだ。で、それを「独自の通貨を持つ」国家財政に適用したもの。これで国家が借金をする(財政出動する)ことで、市中に出回る貨幣量を増やし、経済をまわしていくことに繋げるのである。

 独自の通貨を持つ、通貨発行権のある国が、財政赤字を拡大させても、財政が破綻することはない…よって財政拡大によって経済をまわそう、インフラをじゃんじゃん整備しよう…という考え方は、保守の一部…安倍政治を礼賛する勢力の中にもいる…から一定の支持がある。また主流派経済学からは「異端視」されていることもあって、左の人たちからも喧々囂々、非難続出かもしれないが…
 ポピュリズム政党なら、それもOKじゃないか!

 ということで、「左派ポピュリズム政党」の理論支柱・基礎には「MMT」が座るのである(当然これは「マルクス経済学」ではない)
 おまけのリンク…薔薇マークキャンペーンの資料米国のオカシオ・コルテス現象について (pdf)米国の「反緊縮ポピュリズム」の動きとして、MMTを理論の支柱にせよというオカシオ・コルテス下院議員の主張を紹介したものである。

 ではでは。

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「脱成長」でやっぱり正しい!?

 ようやく「成長」には2つのタイプがある記事のつづき…おさらいしておこう。
「僕はこの二つの経済成長の関係を、桶の中に入った水に例えたりもしています。桶の中に水(労働者)が入っているとして、その水がめいっぱい入っている(完全雇用)とみなして桶のサイズそのものを拡大しようとするのが天井の成長を重視する経済政策で、これに対して桶に水がぜんぜんはいっていないから(不完全雇用)、景気対策をして桶の中に水をもっと注ごうとするのが短期の成長を重視する経済政策です。」(p41₋42)
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 これを受けて、ブレイディ氏がこう続けている…
 「その喩だと、デフレ不況下で「経済成長はもういらない」といのは、「桶に水がはいっていないから水を注ごう」という時に、「これ以上大きな桶はいらない」と言っているような感じになりますよね。そうすると、なんだかトンチンカンな会話になっちゃう。でも、そんな状況で「経済成長はもういらない」なんて言ったら、それこそスーサイダル(自滅的)だと思います。」(p42)

 まあ、言いたいことは分かるのだが、逆に松尾氏の喩は、左派が「脱経済成長」を言っていたのはある意味、正しかったことを証明している。
 そりゃそうだろう…桶に水が足りていない(需要不足)の時に、「サプライサイド」の経済成長を求めて桶をでっかくした場合、出来上がったデカい桶には、よりちょっぴりしか水が入っていないことになる。より悲惨になっちゃうのだよ。
 デフレ不況期に、高度経済成長期と同じようなインフラ整備や原発の増設、さらには「構造改革」なんぞをやれば、よけい供給能力が上がる…だが、その供給を満たす「需要」が増えなければ、よけい不況になるというわけだ。
 だからこの「失われた20年」の間に、サプライサイドの経済成長…一般論的な開発志向の、松尾氏のいう「長期の経済成長」をもとめないことは、正しいことだったのである。

 で、左派がホントに言ってきたことは何か…それは「脱成長」ではなく、「成長の質を変える」 ことである。抜き書きすると… 

 基本的には「社会のあり方を変えて、成長の質(中身)を変えよう」ということである…例えば原子力を使って電力を作るのでは無く、自然エネルギーを使おう…ということだ。(ただし私は別の意味で自然エネルギーには反対である…分かりやすい例示として挙げている)原子力をガンガン使うシステムで「成長」するモデルがこれまで評価されていた。その指標でみると、自然エネルギーを使った場合のモデルでは成長が「緩やかに」あるいは「減少」して見える。しかしそれでも社会は運営され得るのだということだ。(ただし「自然エネルギー」に関して、今の脱原発主流は「自然エネルギーのほうが雇用も増え、経済成長する」というロジックを使っている)
 さて、少子高齢化でかつ「移民」を導入せず人口が減少する社会モデルを考えるにあたって、「社会の組みなおし」が必要になる。なぜならこれまでの社会は人口が右肩上がりであることを前提に組まれていたからだ。社会を組みなおすにあたっては、当然「リストラ」される産業・部門も出て来る…住宅建設なんか、そのいい事例だ。新規の住宅はもうガンガン建つことはなく、これまであるものをリフォーム・リユースしてゆくことが求められる。あるいはぶっ壊して「更地」にする需要だってあるだろう。こういった産業の「組みなおし」の中で「成長の質」は変わる…それだけだ。組みなおしをやっている段階で、かなり資源や労働力を使うことになるので、成長はそれなりに起こる…実は「脱成長」もそうゆうことである。産業・経済構造を変える中で、成長は起こるから、「脱成長」をやる=「衰退」し、「平等に貧しくなる」ということではない。

 社会の「組みなおし」を行うにあたって、それなりの「需要」は出来る…従って「桶の水(雇用)」もそれなりに増えるのだ。

 もちろん、旧来型の「成長」を求めて、例えば新幹線やリニア、高速道路や架橋(「忖度道路」と呼ばれる下関北九州道路なんかもそう)をガンガン整備する方法でも、それなりに雇用は生む…桶の水は増えるだろう。だが、それは持続可能ではないですよ…と言って来たわけだ。
 もっとも、松尾氏らは著書で旧来型の「成長」は求めず、カネを使うところを変えよう❗と言っている。だから本質的なところでは、主張は変わらないですよ…ということが言いたいのである。

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