技術屋さんのお話

辺野古、護岸工事が打ち切られる⁉

 4月1日に「しんぶん赤旗日曜版」からこんなツイートが流れてきた。

 で、昨日の辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動 でその「しんぶん赤旗日曜版」の記事が手に入った…辺野古で闘う仲間たちの間で、当該記事がコピーされて共有されているそうだ。(ネットでは読めない)
 記事の本文の最初のほうを引用しておくと…
 「このままだらだらやっていても仕方がない。(軟弱地盤で)もたないものを造ってもしょうがない」
 打ち切りとなった工事を受注したゼネコンの関係者が打ち明けます。
 今回、打ち切りとなった6件の工事はいづれも軟弱地盤が広がる大浦湾側のもの。2014年度に発注された工事です。(別表)
 工事は14年11月~15年3月にそれぞれ着工され、工期を延長してきました。6件のうち5件の工期は今年2月末まで。1件は3月末まででした。
 _00011_20200405110601 しかし編集部が、各工事の変更契約調書などを調べると、工期は延長されていませんでした。
 打ち切りとなった6件の大半は本体工事が未着手。開始から5年以上かけて何もできずに打ち切られたのです。
 その一つ「ケーソン新設工事(1工区)(①)。ケーソンというコンクリート製の大型の箱を置き、護岸をつくる計画でしたが、やったのは確認ボーリング調査だけです。
 同工事を受注した五洋建設・清水建設・みらい建設工業JV(建設共働企業体)の関係者は明かします。
 「沖縄防衛局から工事を待ってくれといわれたまま、ゴーの指示が出ずに、工期が終わってしまった。それまでかかった分を生産して、ドカンと減額された。」(以下略…図表は記事コピーからのスキャン)
 これはどうゆう意味を持つのか?という問いがあったので、「工事が着手できないまま、当初の設計から大幅に変更になって(巨大なケーソン設置→海中に”先行盛土”して(できるんかい!)ケーソン護岸を小さくする等)しかも設計変更を沖縄県が”承認”しないと前にすすめないんだから、ダラダラと契約していても経費ばっかりかかる。工事費用は工事目的物が出来ないと支払えないので、とっとと契約解除して”清算”し_0001_20200405110701 たほうがエエわけですよ」と言っておいた。それ以上でも以下でもない。

 記事中にある「変更契約調書」等は、沖縄防衛局のHPから閲覧することは出来ない…個々の工事や業務の入札結果はHPから見ることが出来るのだが、いったん契約した工事について、工期延期や請負金額の変更についてはなかなか分からず、情報公開請求等で手に入れなければならないのだ。

 さて問題は、大浦湾側の土木工事は一旦契約解除となったものの、あい変わらず辺野古側の浅い部分を埋め立てる工事や、護岸築造工事が続けられているということだ。
 あとこの記事で調べられた変更契約金額が正しいとするなら、例えば①の「シュワブ(H26)ケーソン新設工事(第1工区)」においても、確認ボーリング調査”だけ”しかやってないにも関わらず、58憶円もの工事費が支払われていること。④の「シュワブ(H26)傾斜護岸新設工事」においては、約316mの護岸を構築する予定が100mしか作っていない(この護岸は土砂陸揚げ用に使用されている)にもかかわらず、当初契約より多い10憶もの工事費が支払われているということ(単純な傾斜護岸工事においてすら、工費の増大が認められる!)…ぶっちゃけた話、大浦湾側はほとんどなぁ~んも出来ていないにも関わらず、78憶円もの工事費がゼネコンに支払われているのだ。

 世間は新型コロナウィルスの流行で、多くの人が仕事にあぶれ、あるいは自粛・自粛で商売もあがったりになって大変なことになっている…多くの人が暮らしに困っているのに、こんな大金が無駄に使われている。そもそも辺野古新基地建設工事には、日々の警備員の費用だけで1日何千万ものお金が使われているのだ!

辺野古新基地建設を止めて、そのカネを民衆に回せ!
と安倍政権に突き付けよう!このままだと、マスク2枚しか奴等は我々に渡さないぞ!

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コンクリート船を見に行く闘争

 先日、仕事関係で広島方面に行く用事があったので、ついでに戦時中につくられたコンクリート船「武智丸」が防波堤として使われている所を見に行った。コンクリート船というと、そんなモン浮かぶのか?と思う人もいるかも知れないが、鉄の船だって浮かぶのだから、コンクリートで船の形を作れば浮かぶのだ。
 コンクリート船の話は、小林一輔先生の著書「コンクリートの文明史」(岩波書店 2004年10月)で知った(小林一輔先生については、こちら)コンクリート船は戦時中、鋼材が不足したため建造されたものだが、提案したのは武智正次郎という人。1941年12月に東条英機首相と海軍艦政本部長にコンクリート船建造の建白書を提出している。その後、武智の土木会社がコンクリート船を建造することになり、造船所が加古川の塩田跡に設けられた。最初は動力の無い特殊油槽船を建造し、1944年~45年にかけて自航できる総トン数840トン、全長64.3m、幅10m、積載貨物量940トンの第一~第三武智丸が建造されたのである。なお、コンクリート船は当時も「泥船」と揶揄されたものだが、戦時中は米軍もコンクリート船を大量に生産しており、総トン数2000トンクラスの貨物船や油槽船を104隻建造している。船としての性能はともかく丈夫で、瀬戸内海で触雷してもびくともせず、揺れが少なくて乗り心地も良かったそうだ。

 場所は、広島県呉市安浦である。JR呉線の安浦で下車。
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 駅員さんがワンオペで対応している。待合室が改装されていて、綺麗だった。

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 昔は安浦町でした…目的とする三津口港は、駅から歩いて15分ほど…「武智丸」と書かれている。

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 国道沿いに歩いて、漁港に到着…

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 おお、コンクリート船が2隻、並べられている!

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 一応、立ち入り禁止となっているが、フェンスは開けっ放し…先ほども牡蠣を食いに来た観光客とおぼしき人たちが中に入っているのを確認している。どうやら近所の人が管理していて開けてくれる らしい。

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 由来を示す看板…台風被害を避けるため防波堤の建設を依頼していたところに、コンクリート船を払い下げてもらって設置したもの。

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 フェンスが開いているので、中に入ってみた…手すりは簡易なものだから、観光客用でないことは分かる。手前の船は半ば土砂に埋もれている。
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 かなり立派なつくりで、大きい船であることが分かる。

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 細かな部材は風化が進み、外に近い鉄筋は錆びている。
 「コンクリートの文明史」で小林先生が述べておられるところによれば
 私は2002年までに数回現地を訪れ、二隻の武智丸をつぶさに調査した。潮風に約60年間曝されてきた船体はいまでも健在であった。強度も設計当時の値を保持している。それだけでも十分に驚きであったが、さらに意外な事実が判明した。船体のコンクリートには信じられないほど多量の塩分が含まれていたのである。コンクリートを練り混ぜるときに使用した砂が原因である。それは、造船所建設の際に掘り起こした廃墟塩田の砂であった。ところが、それにもかかわらず、しかも驚くべきことに、内部の鉄筋はほどんと腐食していなかった。(p156~157)
 コンクリート中の鉄筋は、コンクリート中の塩化物イオン量が1.2~2.5㎏/㎥以上になると発錆するとされている…おそらくそのくらいか、それ以上の塩分量が検出されたのであろう…それでも内部の鉄筋は錆びていないというのは、いかに密実なコンクリートが打設されていたのかということである。しかし、今回確認したように表面に近い部分の鉄筋は錆びが進んでいる。

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 船端にも、コンクリートの浮き、それによるひび割れが見受けられる…少し蹴ってみると、落ちそうだ!内部の鉄筋の腐食は進んでいると思われる。さすがに建造から70年以上が立つと、こうなってくるのだ。
 このコンクリート船防波堤を「産業遺産」的に保全しようとすると、難しいだろう。鉄筋が錆びないようにするためコンクリート補修や塗装をするにしても、建造時の雰囲気を損なわないように材料等を選ばないといけない。防波堤としての役割はまだまだ果たせるだろうから、撤去して別のところで保存するわけにもいかない(だいたい重量がありすぎる!)…結局、このままここに留め置かれて、ちょっとずつ朽ちてゆくのを見ているしかないのであろう。
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 後ろを振り返ってみる…実は吊りをしている人がいた。この人がいるので、フェンスが開きっぱなしになっているようだ。(この人が管理者?)

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 早々に引き上げることにする…漁港周辺には、牡蠣を生産・加工・販売しているところが沢山ある。

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 おまけ…呉線を始め、広島地区で活躍する227系電車…こちらはセミクロスシートで運行中。
 ではでは…

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辺野古ではまともなコンクリートを打つ気がない!

 辺野古の新基地建設現場では、繰り返し生コン車が何十台もいっぺんに入って来る。また先週はずっと天気が悪かった…私はコンクリートを練ったり打ったりする技術でメシを食って来たので、そのへんのことについて書く。
 まず、基本的に雨が降っている時にコンクリートを打設してはいけない。コンクリートを練り混ぜる時は、セメント・水・砂・砂利その他の量をきっちり計量してから練り混ぜる。水の量はコンクリートの施工性の他、強度や耐久性に関わるので重要なファクターである。雨の中でコンクリート打設をすると、その水の量が変化する恐れがあるからだ。よって、原則として雨が降っている時はコンクリートの打設をしない。ただし、屋根がある、シートで被う等の対策をして、打設現場で雨水の進入を防ぐことが出来るのであれば、その限りではない。また少々の雨ならばコンクリート打設をしても問題がなさそうであるが、その目安は「人間が傘をささずに我慢できるかどうか」である。すなわち、傘が必要なぐらいの雨が降るのであれば、コンクリート打設は中止する必要があるのだ。
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 11月18日の朝、生コン車が40台ぐらい来て、シュワブゲート内に入っていった。昼は35台来た。すなわち施工業者はこれだけのコンクリートを打設するにあたり、打設時間中は「傘が必要になる」程の雨は降らないと「予想」したと考えられる。生コン車が沢山来るということは、そんなに激しい雨が降らないという天気予報代わりになるのだが、この日はけっこうな雨が降った…施工業者の「天気予報」は見事に外れたのである。

 さて、生コン車が40台来れば、合計のコンクリートの量はどのくらいになるか?今、普通の生コン車はおおむね4.5㎥のコンクリートを積んでいる(厳密にいうと、コンクリートの質量は2.3t/㎥を目安とするので、2.3×4.5=10.35tとなり、10t積みトラックでは過積載となる…そのため、4.25㎥とか、4㎥しか積んでいない可能性もある)であるから生コン車40台では、4.5×40=180㎥となる。
 一方、コンクリートを打設するスピードは、ポンプ車の台数や作業員の人数等にもよるが時間あたりおおむね60㎥ぐらいが限度である。だから180㎥のコンクリートを全部打設するには単純計算で3時間はかかる。ところがコンクリートには練り始めから打設終了までの時間が定められており、例えばJIS A 5308レディーミクストコンクリート には、9.4運搬b)において
 生産者が練混ぜを開始してから運搬車が荷卸し地点に到着するまでの時間とし、その時間は1.5時間以内とする。ただし、購入者と協議のうえ,運搬時間の限度を変更することができる。
 とあるし、土木学会コンクリート標準示方書【施工編】には
 7.2 練り混ぜから打ち終わりまでの時間
 練り混ぜてから打ち終わるまでの時間は、外気温が25℃以下のときで2時間以内、25℃をこえる時で1.5時間以内を標準とする。これらの時間を越えて打ち込む場合には、あらかじめコンクリートが所要の品質を確保できることを確認した上で、時間の限度を定めなければならない。
 とある。このへんのことは、コンクリートを扱う技術者にとっては基本中の基本だ。
 180㎥ものコンクリートをいっぺんに持ってきても、終わりの方は規定内の時間に打設することはとうてい難しい。上記2つの基準についても規定時間の限度は「協議」や「確認」の上変更できることになっているが、それも無制限ではあるまい。本当はコンクリートを大量に打設する場合、コンクリートはその都度持ってくるのがセオリーであり、一ぺんに大量に持ってくることが邪道なのである。
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 写真は18日昼の搬入時、「第二ゲート」バス停付近に32台目の生コン車を確認したもの。
 実はシュワブの現場には「定置生コンプラント」がつくられていて、抗議行動で生コン車が来られない、時間オーバーになるリスクに対応しているハズなのだが、なぜかその定置プラントは使われず?わざわざ市中から生コンを買って持ってくるということをやっている。定置プラントを使えば「生コン業界」が儲からないからだろうか?
 現場でどんなコンクリートの打設をしているのかは定かでないが、いずれにせよ元請け、大成建設やその下請けのコンクリート打設業者はロクなコンクリートを打っていない、いいコンクリートを打設する技術も能力も気力もないことが伺える。こ奴らは私にとっては打倒対象だぜ!そのことが実地で判明したことも、今回の辺野古現地での収穫でもあった(^^)

 おまけ…前にも書いたが、抗議行動の現場では生コン車のことを「ミキサー車」と呼んでいる。建設業界でない一般の人はそう呼んでいるのだが、生コン車には「ミキシング(練り混ぜ)」する能力は無い。やっているのは「アジテ―ト(攪拌)」である。だから生コン車は正確には「トラックアジテータ」と呼ぶし、業界では「アジテータ(車)」「アジ車」なんて呼び方をする。この呼び方は一般的ではないので、本ブログでは「生コン車」と呼ぶ。

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エコで資源利用効率が低下する話

 先日の二酸化炭素は目的でなく、結果だという記事の、ちょっと補足エピソード
 検証温暖化の最後のほう、p263より
 エコで資源利用効率が低下する
 「エコ技術」で既存の技術を置き換えた場合、例外なしに資源利用効率は低下します。その結果、同じ効果を得るために必要な工業生産量は増大します。特に再生可能エネルギーのような不安定で密度の低い自然エネルギーを利用する場合にはこれが顕著です。
 例えば、日本における太陽光発電パネルの実効発電量は120kWh(㎡年)程度です。これを単純に平均値としての発電能力に換算すると次の通りです。
 120kWh(㎡年)=120,000W・3600sec(㎡365×24×3600sec)=13.7W/㎡

 また、陸上に建設された風力発電では、定格出力2MW程度の平均的な規模で、建設に必要な鋼材重量は250t程度になります。風力発電の設備利用率を15%とすると、平均的な実行出力は300kW程度です。
 この風力発電と同程度の発電能力を持つ太陽光発電に必要な太陽光発電パネルの面積は次の通りです。
 300kW/13.7W/㎡=300,000W/13.7W/㎡=21,898㎡=148m×148m

 一方、定置型の300kW出力の内燃機関の発電機の重量は6t程度です。風力発電でこれを置き換えると、鋼材重量は250÷6=41.7倍が必要になります。また、太陽光発電パネルで置き換えると、太陽光発電パネルの面積は148m四方にもなります。
 実際には制御不能な再生可能エネルギーを用いた電力を安定使用するためには付帯設備として巨大な蓄電システムが必要となるので、火力発電を再生可能エネルギーで置き換えることで、発電部門が必要とする工業製品の規模は爆発的に増加することが分かります。

 定置型300kWの発電機って、こんな感じのヤツ… ちょっと規模の大きな現場なんかに置いてあるようなもの!?上記の論でいけば、同じ出力の風力発電をやれば、この機械が41.7台分の鋼材が、数メートル四方あればすむ敷地も、太陽光パネルを作れば148m四方も必要となる。別のメーカーの発電機は、1時間運転あたり燃料を42.1リットル使用 するようだ。で、鋼材1トン当たりの燃料使用量はちょっと分からないが、銑鉄を1tつくるのに石炭0.8~1.0t、他電力を10~80kWh と「二酸化炭素出しまくり」なことをやってる(鋼鉄は銑鉄をさらに精錬して作る)ことが分かる。すご~く大雑把に、鋼材1トンあたり石炭1t、電力を50kWh使っていると仮定して、風力発電で発電機より余分にかかる鋼材量249tを賄うのに、石炭を249t、電力を12,450kWhも使用することになる…なんか異常な世界だなぁ~コレ。
 
 以上、再生可能エネルギーが、ちっともエコじゃない…というお話である。

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三陸の「復興」もしくは国土強靭化を見て…

 半月ほど、三陸鉄道とその周辺の「乗り鉄」記事を書いてきた。実質、3日間ほどしか現地にはいなかったのであるが、いろいろと「復興」に向けた防潮堤工事や、バイパス道路工事を見ることが出来たのは大きかった。
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 震災・大津波から8年余、まだ仮設住宅に住まざるを得ない人、原発事故で避難生活を余儀なくされている人もいるが、多くの街では高台とかにちゃんとした住宅が整備され、そこで暮らしている。交通網も元に戻った…その上で、さらに「安全」を目指して、防潮堤や道路の工事が今も行われている。
 防潮堤にしろ、バイパス道路にしろ「ここにこれだけのものが必要なの?」というくらい大きい、あるいは立派なものだ。だがここには8年前、確かに巨大な津波が来た…同じ程度の津波は、また来るだろう…そのためにはこれぐらいのものが必要だ!というのは、痛いほどわかる。

 ここで一つ疑問が出る…同様の津波は、今後30年以内に高い確率で来ると言われる、南海トラフ大地震においても起こるとされている。にもかかわらず、例えば高知県の海岸沿いで今、このような大規模な防潮堤工事やバイパス道路工事を行っているということは聞いていない。何が言いたいかというと、三陸で巨大な土木工事が「必要」だからバンバンやっている、だが他の「必要なところ」ではそれがなされていないのではないか?ということだ。
 道路については、もともと三陸地域には、三陸自動車道などの計画・構想があって、震災後は「復興道路」と位置付けられ、予算を投下して建設が勧められた。道路建設は周辺の道路整備も同時にやらないと意味をもたない。防潮堤を新しく作る、同時に海岸も整備するということで、同時並行的にバイパス道路も作っているのだろう、それはよい。
 だが、例えば高知県ではそのような高規格道路の建設計画はなく、住民の安心のためのバイパス道路を整備しようとしたら、一からやらないといけない。予算もつきにくいだろう。そうすると、次に南海トラフ大地震の津波が来る前に、バイパス道路整備や防潮堤整備が間に合わないということにもなりかねない。

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 「国土強靭化」という事が言われている…東日本大震災の後も、熊本地震を始めとする震災や、台風、集中豪雨による被害が多発している。今も台風15号による停電は、千葉県等で現在進行形である。加えて高齢化が進み、災害に対応する人的リソースも低下する中で、ハード面の防災対策をきちっと行っておくことは急務である。
 消費税増税に反対している元内閣官房参与の藤井聡 氏などは、「アベノミクス」の中の財政出動でバンバン「国土強靭化」のための公共投資をやるように主張していたわけだが、それは三陸では十分に行われた「かも」しれないが、まだまだ不十分だと感じているのだろう。で、安倍政権はそういった方面にカネも政策も出さず、財政出動はフェードアウトのうえ、消費税増税!に舵を切った…増税した分が公共投資に回るかどうかは分からない…おそらく過去にあったとおり、ルーチン的な「国債償還」と法人税減税とかに消えるのであろう。ということで藤井氏は、財政規律なんかには構わず(MMT理論に基づいて)大規模な財政出動をして国土強靭化・公共投資をしろ!と言っているわけだ。このあたりは温度差こそあれ、松尾匡氏や山本太郎氏も同様だろう。
 また、金を出すだけで「国土強靭化」が出来るわけではない…建設業界も高齢化・人手不足が続いているのだ。必要なリソースを、それこそ「無駄」なオリンピックや万博、カジノに使うわけにはいかないのだ。(工事を請け負うゼネコンにとっては、とにかく金がはいってくれば、オリンピックスタジアムでも賭場でもエエわけだが…)

 三日間、三陸を回りながら得た感想である。

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お墨付きを与えるだけの有識者会議

 先週のネタだが、辺野古埋め立てにおいて大浦湾の軟弱地盤改良の「有識者会議」が立ち上がるのだそうな…琉球新報より
辺野古軟弱地盤改良で有識者会議 政府、9月初旬に初会合 工事の正当性主張が狙い
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府は埋め立て予定海域の大浦湾側に広がる軟弱地盤の改良工事について、土木工学の専門家らでつくる有識者会議を設置する方針を固めた。9月上旬に東京都内で初会合を開く。地盤改良を進めるためには防衛省が県の玉城デニー知事に計画変更を申請して承認を得る必要があり、有識者の“お墨付き”を得て工事の正当性を高めたい狙いがあるとみられる。
 今年3月に防衛省が国会に提出した地盤改良に関する報告書によると、改良が必要な海域は大浦湾側を中心に73ヘクタールあり、地盤を固めるために海底に砂ぐい約7万7千本を打ち込む工法を用いる。地盤改良は海上から実施する工事に3年8カ月、陸上で実施する工事に1年1カ月をそれぞれ見込む。
 現在、沖縄防衛局の委託業者が設計変更に関する作業を進めており、今後焦点となる県への変更申請は、年明け以降にずれ込む可能性もある。
 岩屋毅防衛相は今月8日の会見で、変更申請について「できるだけ早く出せるように努力していきたい」と述べた。

 以前書いたシュワブ(H31)土木基本設計業務の結果をふまえて…大体こんなのは大まかな「施工方針」は決まっているだろうから…それで改良工事をやる前提のもと「有識者会議」の検討会が3~4回ぐらい行われる。そして出てくる「結論」は、海面下90mまでの軟弱地盤を全て改良しなくても、施工後地盤沈下や護岸の沈下、傾き(こっちのほうが危ない)が出るだろうけれど、補修しながら供用することは可能である…よって、本工法で問題なく埋め立て工事が施工できる…というものになるだろう。(関西空港や羽田空港D滑走路工事なんかも、軟弱地盤を全層にわたって改良する工事はやってない…そんなこと出来ない)
 まさに「結論ありき」の茶番!デタラメな工事とそこへの何百、何千億円もの予算投入にお墨付きを与えるものでしかない。
 そして北上田さんも指摘しているよう 、「有識者」とやらは、技術的に可能か?とい点のみでしか判断をしない。土木工学、地盤工学の設計・施工だけ扱う「専門家」だけ集めても、例えば大規模な地盤改良工事をやってそれが大浦湾の環境にどのような影響を与えるかなんてことは分からない(これも関空や羽田空港D滑走路のような、大浦湾と比較して自然度の低い所での「経験」しか役に立たない)ましてや、辺野古埋め立てが社会的にみてどういった位置づけにあるのか?なんで「社会的」なことは絶対に考えない。これは断言できる。

 また、施工できるかどうか、現地の状況はどうか…なんてことは現場をみないと分からないこともある。だが「有識者」の皆さん(おおむね大学の教授とか)は、まず確実に、日々、抗議行動が続き、カヌー隊と海上保安庁が攻防を繰り広げる辺野古の海の現場なんか見に来ないだろう…これも断言できる。
 だがこうも言っておこう…有識者の皆さまへ、必要ならば政府から「主張旅費」は出るハズだ…だから辺野古・大浦湾に来て、海を見て、まともな判断をしてもらいたい!と…それが学者・技術者としての良識でしょ!

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おそらくこいつらが検討してるんだろう

 先週の話しだが、辺野古新基地建設は不可能じゃないんじゃないか?という記事が出ている。琉球新報より
軟弱地盤、最深90メートル 辺野古新基地・大浦湾側 識者「改良工事、例がない」
 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設に伴う新基地建設に関し、大規模な改良工事を要する軟弱地盤が大浦湾一帯に存在する問題で、最も厚い軟弱な層は水深約90メートルにまで達していることが6日、分かった。これまで最も厚い軟弱層の深さは水深約70メートルとされていたが、防衛局が追加で調査したところ、さらに20メートル深い層が見つかった。鎌尾彰司日本大理工学部准教授(地盤工学)は政府が計画する地盤改良工事について「水深90メートルまでの地盤改良工事は知る限り例がない。国内にある作業船では難しいのではないか」と指摘している。(以下略)

チョイさんの沖縄日記では、防衛局の元資料 が添付されている。

 さて、海面下90mを地盤改良する、地盤改良船は、まぁ確実に日本にも世界にも存在しないのだろう。で、1月以降、政府が軟弱地盤の存在を認め、沖縄県に対し「設計変更の手続きをする」と言ったり、大浦湾の海底に砂杭6万本とも、7万本も打ち込むとかいう、具体的な話がでてきているのだが…ではいったいどこがこのような設計・検討を行っているのか?

 沖縄防衛局のHPから、入札、契約状況>建設工事関係>平成29年度 業務発注実績というのを見てみると(工事や業務をどこにいくらで発注しているのか?ということはこうゆうところから分かるのだ)、下の方に「調114 シュワブ(H29)土木その他設計 という業務がある。そこをクリックしてpdfファイルを開くと  …随意契約結果書というのが出てきて

業務名 シュワブ(H29)土木その他設計
業務概要 本業務は、普天間飛行場代替施設建設業務に係る実施設計(基本検討を含む)を行うものである
方式等 公募型プロポーザル
実施場所 
※※※※
契約年月日 平成30年3月6日
履行期間 平成30年3月7日 ~平成31年3月31日
契約の相手方 シュワブ(H29)土木その他設計日本工営・日本港湾コンサルタント共同企業体
住所 沖縄県那覇市金城5丁目5番8号


となっている…
 すなわち、日本工営株式会社 と、株式会社日本港湾コンサルタント という超大きな建設コンサルタント業者の共同企業体が、昨年の年度末に契約し、今年の年度末までの業務期間で、辺野古埋め立て工事他、基地建設工事のトータルな設計や工程を検討しているのだ。契約期間が今年の3月末ということなので、昨年末には大まかなものが完成している…その結果が、防衛局から発表されているということだ。

 ちなみにいくらでその業務が行われているか?というと…

 271,512,000(税込み)円…

 2億7千万円

 である。予定価格の99.97%

 なぜ、この2社に「随意契約」なのか?「平成29年度 業務入札結果」をつらつら見てみると、調41 シュワブ(H29)土木設計 が同じようにこの2社と契約されている。履行期間が平成29年10月11日~平成30年3月31日 契約金額は6千5百万円
 調33 シュワブ(H29)埋立実施設計 ってのもこの2社…これが総合評価方式の一般競争入札で、履行期間が平成29年9月14日~平成30年3月31日 契約金額は3千9百万円 である。
 おそらく2017年度に「埋立実施設計」というのを4千万円ぐらいで両社に発注…いちおう軟弱地盤対策も含め、これぐらいのお値段で、17年度中にやってね…というところだったのが、いや、これじゃぁ~設計できんわ、もう少し追加データとか頂戴、追加の検討・業務も必要でしょ…とやってるうちに、10月に大きな契約変更…随意契約で別途6千万で契約…それでも「無理だ、できん」ということで、検討期間も1年延長、項目等も追加して、3倍以上の2億7千万円で随意契約しなおした…ということだろうな。

 それにしても…こういった「設計」や「施工検討」業務の費用を積み上げるのは、基本的に技術者が何人、どのぐらいの日数で働くか…ということで決まる。その他かかるのが、解析に使用する電子計算機の費用とか、土質調査の業務だと、ボーリング機器の損料や、それを動かす作業員さんの人件費等が含まれる。その合計に経費をぶっかけて「予定価格」を決めるのだ。 基本、設計、検討の業務は技術者の「人件費」である。様々な資格を保有し、業務経験も豊富な「能力の高い技術者」は単価が高い…そうゆう人たちが何人も、何日もその業務にかかわって設計・検討が出来る…と言う仕組みになっているのだが…

カネと時間を際限なくかけても、 
   出来ないモノは、出来ないの

 最初に上げた報道にもあるよう、海面下90mの地盤改良をする作業船が無い(作業船があるかどうか調べることも設計検討業務の中に入っており、「能力の高い技術者」さん達はそれをちゃんと実行し、分かっているハズだ)ところで、2兆の契約を3兆、4兆に増やしてもいっしょのことなのだ。(新しい「作業船」を「設計」する業務…となると、また別の業務となる。それはそれで別途お金がかかる)
 ちなみに私もこの設計検討業務…確かに難しい案件ではなるが、1億円台でおさまっているだろうと考えてはいた…しかし、2億7千万円もかけてたとは、何だこりゃ~の世界だったなぁ~
 まざに設計の段階から、「税金の超無駄づかい」なワケだ

 あと、株式会社日本港湾コンサルタントは、事業紹介 交通 を見てみると、関空、神戸空港、北九州空港、中部国際空港と、まあありとあらゆる大規模埋め立て工事に関わっている(それだけプロだっていうこと)、また日本工営株式会社のあゆみ を見ると、いきなり朝鮮で鴨緑江水力発電事業に参画してたって書いてある。日本工営は日本の「侵略企業」でもあったということも、付け加えておこう。

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わけの分かんない土を盛土に使うな!

 こんなニュースが流れてきた…原発事故後の「除染」で出てきた汚染土を、高速道路の盛土に使うというもの…NHK福島NEWS WEB より
除染度再生利用を高速道で計画
 南相馬市小高区で行われる常磐自動車道の拡幅工事で、環境省が除染で出た土を再生利用する実証事業を計画していることがわかりました。住民からは反発も出ていますが、環境省は今月中の住民説明会の開催を検討しています。
 関係者によりますと、再生利用される除染で出た土は、1キログラムあたり平均770ベクレルほどの土壌の一部で、再生利用の基準の8000ベクレルを下回るとされています。
 環境省はこれを南相馬市小高区で行われる常磐自動車道の拡幅工事のうち、一部の工区で使う計画だということです。
 除染で出た土の再生利用の実証事業は、これまで南相馬市の除染廃棄物の仮置き場で行われましたが、実際の工事が対象になったことはありません。
環境省は先月、計画の内容を市議会や行政区長などに説明したということで、今月中の住民説明会の開催を検討しています。
 しかし住民の一部からは再生利用することだけでなく、説明会を開くことにも反発の声が上がっていて、実施の日程は決まっていません。
 除染で出た廃棄物は、双葉町と大熊町に整備が進む中間貯蔵施設に保管されたあと、2045年までに福島県外に搬出され、最終処分されることになっています。
 環境省は最終処分する量を減らすため、公共工事などでの再生利用の拡大を目指しています。

 低レベルでかつ周辺から覆われるような形であっても、公共工事の盛土内に入れるなど放射性物質を拡散させ、ウヤムヤにしてしまってはイケナイ。汚染された「除染土」は、できれば一定の箇所に集約し、周囲のだれがみても「汚染土がある」と分かるような形にしたうえで、コンクリート等で覆いかぶせるしかないのだ。(だから「中間貯蔵施設」を頑丈に作り、ここで「全量」を完璧に管理するしかないのである。)

 さて、東京新聞の「こちら原発取材班」の中に、汚染土の公共工事再利用 引き受け手見えずという2016年7月段階の記事がある。環境省は以前から8000ベクレル以下の汚染土を公共事業の盛土等に再利用する構想をたて、南相馬市で実証実験をやっているという。
 この一角に遮水シートを広げ、土で流出防止用の堰(せき)を造り、その中に汚染土を入れ、土をかぶせる。その上に、アスファルトやコンクリートを施工し、道路や防潮堤を模したものを造るという。
 リンク先には、再利用のイメージとして、盛土の真ん中にブロック状に「汚染土」が埋まっている絵も描かれている。
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 盛土内に、汚染土を入れるイメージは、こうなるが…今回のニュースで流れたのは常磐自動車道の拡幅工事ということだ。高速道路の拡幅工事では、ケースにもよるが「腹付け盛土」といって、既存の盛土の隣に土を持ってくる…従って、このような図になる。
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 黄緑色が、既存の高速道路、黄色が「腹付け盛土」、茶色が「汚染土」である。腹付け盛土はそれほど大量の土を使用しないので、処分できる「汚染土」量も少なくなる。また、通常の土の遮蔽も、一般的な盛土とくらべ取れない。
 また、単なる「建設残土」…すなわち別の公共工事で発生した「捨土」を再利用するのであれば、新しい盛土構造物と残土はほぼ一体化させることが出来る。しかし除染ででてきた「汚染土」はほとんどが表土に近いものだ。表土は木や草の根など有機物を含んだりしているので、構造物を構築する盛土には使わないことになっているのである。やむを得ない場合は盛土の中のほうに薄く引き伸ばして使うことになっており、大量に盛土に使ってはイケナイのだ。
 土だからかさ増しに使えるだろう…というのは、環境省の役人が土木技術を知らないだけなのだ
 この福島に大量にある「汚染土」に関しては「政府がやがて辺野古の埋め立てに使うのでは?」という話も、チラホラと聞こえてくる。ただし、いくら「ただ同然で大量にある(運搬費しかかからない)」ものでも、表土である以上、盛土構造物に入れることはないし、やってはイケナイのだ。
 よって、除染で出てきた「汚染土」を公共事業で大量に「再利用」するのは、放射性物質の拡散という観点のみならず、公共事業の品質確保の面からも、そして結局は大量に「処分」することなぞ出来ないことからも、反対する。環境省の役人どもよ、つまらないことを考えるな

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土砂崩れで高速道路の橋がふっ飛んだ話

 この度西日本を襲った豪雨災害…雨は止んだとはいえ、あちこちで甚大な被害が出ており、道路が通行止めで孤立している、水道等が復旧しておらず、避難を続けている人がまだたくさん居られます。犠牲者も沢山出ました…被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 この災害に置いて、安部が災害対策本部も立ち上げず、飲み会を開いていた とか、オスプレイを17機買う金で、レッドサラマンダーを各県に何台も配備出来るとか、いろいろあるんだけれど…そうゆうのは他のブログさんに任せよう。

 私が気になったのは、次のニュースと写真…毎日新聞の8日夜の配信記事
 高速、47カ所でのり面や橋の崩落など被害を確認
 西日本を中心とした豪雨で、西日本高速道路の管内では8日午後5時現在で近畿、中四国、九州の47カ所でのり面や橋の崩落などの被害が確認された。うち7カ所は復旧までに相当な時間がかかるという。JR西日本と四国の管内では、橋脚の流出などで不通区間が発生している。(中略)
 高知自動車道大豊インターチェンジ(IC)-新宮IC間の上り線にある立川トンネル南側付近(高知県大豊町)では道路脇の斜面が崩れ、路面が長さ約63.5メートル(約1200トン)にわたって崩落した。高知県によると、下を走る県道と林道が封鎖されたため4集落の49世帯72人の孤立状態が続いているという。高速道と県道は6日夜から通行止めで、けが人はいなかった。(以下略)

 リンク先に写真が載っているが、土砂崩れによってトンネル手前の橋梁が完全に吹っ飛んでいますうわぁ~怖ぇ~
 なぜこの記事が「気になった」かというと、道路の防災上、「土砂崩れ」対策として橋梁を選択するケースがあるというのが、教科書的なお話だからである。以下、説明しよう。
 なお、ここから一般的に「土砂崩れ」という言葉は、土木や他の学術的な用語である「土石流」と呼ぶことにする。
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 上図のように、斜面の裾野に道路を通す計画があるとする。青の点線は渓流である。この渓流に沿って、大雨が降った場合、土石流が発生する可能性がある。
 道路を盛土構造で作った場合、渓流の水はカルバートボックス(函渠)を作って下流に流すことになる。しかしカルバートボックスでは発生した土石流が流れ切らず、道路に乗り上げて来る恐れがある。
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 こうなっちゃうわけですね。土石流が道路の上に乗りあげると、その土砂を除けない限り、通行止めを解除できないリスクが存在するわけ。
 そこで、土工の代わりに橋梁構造にすると…

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 下のクリアランスが大きいので、土砂が下を流れることになる。道路上には溢れて来ないので、通行止めのリスクが小さくなるわけ。

 これが土石流(土砂崩れ)対策で道路構造を橋梁にする話の基本である。

 もっとも今回の高知自動車道のケースは、急斜面の途中にトンネルをぶち抜いた形になっているから、土石流があろうがなかろうが橋梁形式になっていた箇所である。トンネルの坑口上部からの土石流は、巨大な防護壁をつくらない限り、防ぎようがない。今回は斜め横から土石流が橋を直撃し、そのまま橋が持って行かれた…多分、こうゆうことは想定していないだろう…ひとたまりもなくやられている。

 急斜面の横に道路や鉄道を通す場合、土工では土の切り盛りが膨大になるので、建設費がかかってもトンネルや橋梁にするケースも多い。トンネルはともかく、橋梁設計で横から土石流が襲ってくることはほとんど想定しないから(河川中の橋梁の場合、洪水時に例えば木が流れてきて引っかかる荷重を想定するケースはある)、今後の道路・橋梁設計や道路防災における見直し事項になるであろう。

 ではでは

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なぜ「コンクリートの寿命は60年」なのか?

 先日、コンクリートの建物はそれなりに持つの中で、”「鉄筋コンクリート製の建物の寿命は、60年」ということになっている”と書いた。実はこの60年という数字、税法で決まっている法定耐用年数のこと。現在、鉄筋コンクリート製の建物の法定耐用年数は47年であるが、1998年に法律が改正されるまでは、60年であった。
 では、この60年という数字が、どこから出てきたのか?というと…

 コンクリートの「中性化」速度である。

 コンクリートはアルカリ性に保たれており、そのおかげで内部の鉄筋が錆びない。アルカリ性によって鉄筋表面に「不導体被膜」という、厚さ20~60オングルストームの薄い酸化膜ができる。これが鉄筋を保護している。
 ところが空気中の二酸化炭素により、コンクリートは表面からアルカリ性が「中和」されてゆく。具体的にはコンクリートの細孔に含まれる水溶液がアルカリ性を示しているのだが、空気中の二酸化炭素が溶け込むことにより、細孔溶液がアルカリ性から中性になる。これをコンクリートの中性化とよんでいる。

 コンクリートが中性化すると、鉄筋表面にある不導体被膜は破壊される。そこに水や酸素などの鉄筋劣化因子が侵入してくると、鉄筋が錆びてくる。鉄筋が錆びると体積が増え、膨張するので、その影響により鉄筋の外側のコンクリートが剥がれ落ちたりする。また鉄筋が完全に錆びてしまうと、鉄筋そのものが無くなってしまうわけだから、鉄筋コンクリート構造物としての機能を失うことになる。

 中性化はコンクリート表面から進んでゆく…年月が経つほど深い部分まで二酸化炭素が入り込むことになる…でもって、おおむね60年ぐらいたつと、中性化が標準的な鉄筋コンクリートにおいて、鉄筋が埋まっている深さ3㎝ぐらいのところまで進む…だからそこを「コンクリートの寿命」としたのである。

 もちろんコンクリートが中性化したからといって、直ちに鉄筋が錆び、コンクリートが剥がれ落ちたり、崩壊するということはない。中性化が鉄筋の位置に達したとしても、酸素や水分が供給されないと、鉄筋は錆びない。また全てのコンクリート構造物が、一律に60年経つと3㎝の深さまで中性化するわけでもない。作られたコンクリートの「品質」によりけりで、具体的には固くて緻密なコンクリートが出来ていれば、二酸化炭素や水などの劣化因子が侵入しにくくなるので、中性化速度も遅く、鉄筋が錆びるのも遅くなる。

 また先の記事でも触れたが、コンクリート表面に塗装を行い、二酸化炭素の進入を防ぐことで、中性化を遅らせることが出来る。塗装も、普通の塗料のようにコンクリート表面に塗膜を形成するものから、コンクリートの内部に浸透し、化学反応をおこしてコンクリート表面を緻密にするようなモノもある。後者のようなコンクリート保護材料は、含浸材ということもある。

 一旦中性化したコンクリートは、自然状態では元に戻ることはない。ただし、電気化学的な力を加えて、コンクリートにアルカリ性を再度付与することが可能である。コンクリート表面に、炭酸ナトリウム等の電解質溶液と陽極材を配置し、内部の鉄筋に電線をつないでマイナス側につないで5~50Vの電圧をかけ、1A/㎡の電流を1~2週間程度流すのだ。こうすると鉄筋から表面にかけてのコンクリートが再度アルカリ性になる。ただし工事にはそれなりの設備が必要になる。大坂城の天守閣は、1996年の改修工事でこの「再アルカリ化工法」が行われている。

とまぁ、こんな具合である

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